第15話

「それじゃあ、皆様、グラスを手に。せーの」

「「「優奈ゆうなちゃん、誕生日おめでとー!」」」

「イェーイ、センキューエブリワン!」

 なんか、優奈が若干うざい。まぁ、いいけど。

 こうして、倫理りんりさんの音頭で幼女幽霊優奈の誕生日会が始まった。

 幽霊に誕生日を祝う意味があるのか、疑問ではある。年取るのか、幽霊……?

 いろいろと思うところはあるが、とりあえずご馳走ちそうは用意した。

 優奈が好きな唐揚げにポテトサラダ。それに、エビピラフとコーンスープ。ご機嫌な食卓だった。

 北上きたがみ先輩も調理を手伝ってくれたので、結構楽に終わった。

 ちなみに倫理さんは、優奈と一緒に特撮見てた。行けー、じゃないんだよ、まったく……。

 その倫理さんは現在、ビールをあおっていた。子供の前なので、自重して欲しい。いや、無理かな。倫理さんだし。

 ビールのがぶがぶいっている倫理さんの横では、優奈がご馳走をがつがついってる。

「……優奈。誰も取らないし、おかわりもあるから落ち着いて食べろ」

「もふぉっふぉ!」

 ……分かった、かな。

「優奈ちゃん。口の周りが……」

 北上先輩が、優奈の口をいてあげていた。

 本当に親子みたいだな。

 思えば、優奈と過ごしているうちに北上先輩とも親密になったし、倫理さんともよく話すようになった。

 不本意ながら、良いことなのかな。

 一人暮らしで、友人たちとバカをやるのもいいけど、優奈とぎゃあぎゃあと騒ぐのも楽しい。

 年の離れた妹ができたみたいだ。

 ……おっと、忘れないうちに渡しておくか。

「はい、優奈。これ」

 俺は、ラッピングされた箱を手渡した。

 だが、優奈は不服そうだ。

「……どうした?」

「ムードがない」

「は?」

 思わず、首をかしげてしまう。

「いい? 潤一じゅんいち。女の子にプレゼントを渡すのには、ムードが重要なの。そのくらい分からないと、一生彼女ができな――」」

「はーい、プレゼント没収でーす」

「にぎゃー!?」

 相変わらずのバカ騒ぎだった。

 10分くらいぎゃあぎゃあとやった後、優奈にプレゼントを渡す。

 素直に最初から受け取れよ……。

「わ、ネックレス!」

 早速、いそいそとネックレスを優奈が付けた。

「ね、潤一、似合う!?」

「ああ、似合ってるぞ」

 良かった。喜んでくれたか。

 北上先輩と一緒に選んだかいがあったな。最終決定は、俺にゆだねられた時はドキドキけど。「最後は絶対阿部あべ君が選んだ方がいい」と言われたのは、よく分からなかったが、優奈が嬉しそうだし、いいか。

 そんな時だった。

 俺の携帯電話が震えた。表示された名前を見て、緊張しながら電話に出る。

『おっすおっす、論理ろんりおねいさんだよ』

「また、それですか」

『さて、阿部君……』

 論理さんは、ひと呼吸おいて、言う。

『優奈ちゃんの調査が終わったよ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る