第12話

「で、阿部あべ。なぜ私たちは正座させられているんだ?」

「気分です」

 秋の日差しが差し込む部屋で、俺は正座する2人の女の子……、うち1人はタバコ吸うけど、まぁ女の子2人を正座させていた。

 1人は、俺のアパートの隣人である浮雲うきぐも倫理りんりさん。

 そして、もう1人がこの部屋に住まう幼女幽霊、優奈ゆうなだった。

 まったく、聞こえてきた言葉から陰陽師おんみょうじでも来たのかと……。いや、陰陽師ってなんだ。優奈と出会ってから、オカルト方面への受皿が広くなったような気もする。

 さて、そんなことは置いておいて。

「優奈。知らない人は、部屋に入れるなって言わなかったか?」

「え、でも倫理は潤一じゅんいちの知り合いなんでしょ? 『隣の家の人だー』って、言ってたし」

「……噓だったら、どうするんだよ」

 俺は、深いため息をついた。幼女らしく素直すぎる。世の中には、いっぱい悪い人間がいると言うのに。

「まぁ、そんなに優奈を責めるな」

「浮雲さん……」

「適当に丸め込んで、部屋に上がったのは私だからな」

 更に深いため息が出た。まったく、この人はまったく!

「で、今日は帰りが遅かったみたいだが、なんかやってたのか」

「なんで、俺の帰宅時間を把握しているのかは謎ですが、まぁ少し調べ物を」

「優奈についてか?」

 浮雲さんの言葉に優奈は、首をかしげる。そして、ハッとしたように、

「私のスリーサイズを!?」

「お前が死んじゃった原因を調べてたんだよ!」

 まったく、この幼女はまったく!

「ん、なんだ阿部。優奈を成仏させてあげたいのか?」

「……ええ、まぁ」

 なんか気まずくて頬をかいてしまう。

「潤一は……」

「ん?」

「潤一は、私といるのが嫌なの?」

 ……まぁ、そう思うよな。

 照れくさいけど、本音を言うしかない。

「別に嫌ってわけじゃない。なんだかんだ、……楽しいし。でも、お前がずっとここにいて、ずっとどこにも行けないのは……、嫌だ。優奈の友達として、お前を助けたいんだ」

「……うん」

 優奈は、下を向き手をもじもじと動かしていた。照れてる……のか。

「じゃあ、論理ろんりを呼ぶか」

 なんだか和やかな雰囲気が流れていたが、浮雲さんが口を開いた。

 って、論理?

「誰です?」

「前に話さなかったか? 私の双子の姉、浮雲うきぐも論理ろんり。職業は――心霊調査員だ」

 浮雲さんは、下手くそなウインクをした。

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