第11話

 さて、どうしたものか。

 俺、阿部あべ潤一じゅんいちは町の図書館で1人頭を悩ませていた。

 理由は、大学生らしくレポート課題に取り掛かっているのではない。

 俺の部屋にいる幼女幽霊の優奈ゆうなについてだ。

 先日、優奈は離れ離れになったお母さんに会いたがっていることが分かった。

 そこで、昔の新聞に優奈が関わっている事故なんかがっていないか調べてに来たのだが……。

「手がかりなしか……」

 やっぱり素人が調べるには、限界がある。

 だからといって、警察に「幽霊の未練を晴らしたいから、過去の事故について教えてくれ」なんて言ったら、確実に追い返されるだろう。

 後は……、探偵事務所?

 いやいや、結果は警察に行った場合と同様だ。

 となると、頼れるのは友人だろうか?

 北上先輩とかは、協力してくれるだろうし、頼りにもなるが、それでも素人には変わりない。

 残る選択肢は、ネット上の怪しい心霊調査員になるわけだが、正直言って、めちゃくちゃ頼りたくない。胡散臭うさんくさすぎる。

 結局、俺は手がかりを得ることなく、図書館を後にした。

 帰りながら、考える。

 幼女幽霊、優奈。

 俺にとって、あいつは何なんだろう?

 はじめは、どうにかして追い出したいと思っていたが、今はどうなんだろう?

 俺は。俺は、……。

 

 気付いたら、家についていた。

 鍵を取り出して、玄関のドアを開ける。

 が、開かなかった。

 あれ、もしかして鍵かけ忘れたか?

 もう一度、鍵を回してドアを開けてると、今度はすんなりとドアが開く。

 すると、声が聞こえてくる。

「……残念だったね。これで、終わりだよ。可愛い幽霊さん」

「いや、やめて……!」

 俺は迷わず、居間へと続く短い廊下を走る。

「優奈!」

 俺の目に飛び込んできたのは……!

「いえーい、1位ー」

「くっそー、負けたー!」

 レースゲームで白熱する優奈と俺の隣の部屋の住人である浮雲うきぐも倫理りんりさんだった。

「あ、潤一おかえりー」

「おう、阿部。お邪魔してるぞ」

 能天気な2人の反応に、俺は、乾いた笑いしか出てこなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る