第6話
「えーと、つまりこの子は、親戚の子じゃなくて、この家にもともといた幽霊だと……」
俺は、その問いかけに静かにうなずいた。
つい先ほどのことだ。
俺は、バイト先の先輩である
帰ってきた瞬間、目に飛び込んできたのは、天井から逆さまに体をはやした幼女幽霊、
流石に北上先輩に幽霊と同居しているのは、バレたらまずい。親戚の子が遊びに来ている体で何とかごまかせないかなー、とか思っていた俺の計画は、一瞬で崩壊したのだった。
と言うか、優奈の奴、何気に出会ってから一番幽霊っぽいことしてたんだよな。あの脅かし方なら、北上先輩と一緒じゃなかったら普通に驚いていたかもしれない。
タイミング悪い奴だな……。俺が言える立場じゃないけど。
もうごまかしがきかないので、俺は仕方なく事情を説明した。
もうすぐ出番が来るであろうコタツに向かい合わせに座った俺と北上先輩。事情説明は終わったが、北上先輩は俺の横に座っている優奈を見ていた。
対する優奈は、どうしていいか分からず俺の方を見ている。
めっちゃ気まずい……。
「……ねぇ、
「な、なんでしょうか?」
声が少し裏返ったが、何とか声を出す。
「阿部君って、ロリコンなの?」
「はい!?」
今度は、完全に声が裏返った。
なぜ急にロリコン疑惑が!?
「いや、だってそんな小さな幽霊を追い出そうともせず、一緒に暮らしてるってことは、その多少の下心が……」
「ないですよ! 単純に幼女だから追い出したりするのに抵抗があっただけです!」
俺は、力強く断言する。
想像以上にやばいことが起きているじゃないか……!
俺は、この疑惑を完全に排除するにはどうするか思案していると、優奈が声を上げた。
「そうだよ!
余計なことを口走った優奈をベッドに放り投げる。
頼むから黙っていてくれ!
「なんというか本当に兄妹みたいね」
俺たちのやり取りを見ていた北上先輩が、優しく
「北上先輩?」
「ふふ、分かってたよ。阿部君がそんな人じゃないって」
「……はぁ~、良かった」
「ごめんね? 意地悪して」
さっきまでの疑惑の目からいつもの優しい先輩の目に戻って、俺は、安堵した。
「そうだよ! 潤一は、おっぱいの大きい人が好きなんだから!」
「「……は?」」
「え? だってさ、漫画の雑誌とかゲームのキャラとかも、おっぱい大きい人よく見てるじゃん」
再び、沈黙が訪れる。
「……やっぱり男の人って、大きい方がいいのかなぁ」
北上先輩が、何やら彼女自身の胸に視線を落としているが、今はそれどころではない。
「てんめぇぇえぇぇぇぇえぇええぇぇえぇえぇぇぇぇ!」
俺は、また一瞬にして怒りが再燃したのであった。
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