第3話

 さて、ここで一般的な大学生である俺、阿部潤一あべじゅんいちに起きたことをおさらいしておこう。

 俺は、希望に満ち溢れた大学生活の第一歩として、一人暮らしを始めた。その際に、家賃をなるべく低く抑えたいと思い、事故物件であるこの部屋を選んだ。当時は、幽霊の存在など1ミリも信じていなかったので、事故物件といえど何も出ないと思っていた。

 しかし、7月に状況が一変する。

 出たのだ。信じていなかった幽霊が。

 だが、その幽霊は幼女でまったく怖くなかった。初めて会ったの、昼だったし。

 その幼女幽霊は、俺のリアクションが気に入らず、それ以来部屋に居座り、たびたび驚かせようとしてくる。

 ……振り返ってみると、異世界転生とかに比べるとインパクトには欠けるが、なかなか奇想天外なんじゃないだろうか?

 だが、そんなことも言ってられない。幼女幽霊分の食費がかかる以外にも、問題はあるのだ。

 そもそも、幼女幽霊は何故幽霊になったんだ?

 こいつは、俺が驚けば成仏するのか?

 ……今までは、特に気にすることもなかったが、こいつは結局のところどうしたいんだ?

 もし、俺がこの部屋を離れることになるとする。その時、俺を驚かせるためだけについてくるとかになると、もう面倒くさいどころの話ではない。それはもう、シングルファーザーの誕生だ。

 それを阻止するには、いろいろと聞き出すしかないか。

「おい、そこでゲームをしている幼女幽霊!」

「なに? あと、幼女幽霊じゃなくて、優奈ゆうなだよ!」

「……優奈。お前は、成仏したとか思うのか?」

「うーん、成仏って言っても、私自分の未練とか分かんないし。しばらく無理じゃないかな」

「……えぇ?」

 そうか、失念していた。自分がなぜしんだのかすら、覚えてないのか。もしも、優奈が事故で頭を打ったとかなら、その瞬間の出来事を忘れても不思議ではない……はずだ。

「あ、未練なら1つ覚えてることがあるよ!」

「なんだ?」

「最近、ポテチで新作の味が――」

「今日のお前の晩ごはん、生ピーマンオンリーな」

「うわー⁉」

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