23.滅亡の果て①
「きろ...起きろ...起きろロゼット!」
「わっ!?」
僕は驚いて、転げ回った。盛大に転げ回った。
そして、頭を丸太にぶつけた。
「大丈夫か!?」
僕は土を耳からかっぽじって、そして言った。
「だだだだだ大丈夫だだだだだ」
「だだだだだ」
「だだ...」
「だ...」
「...だ。」
「...何かあったのか?」
トキロウは怪しんで聞いた。
「いや...なんでもない。」
「...?」
... ... ...
キクラゲダコ(トキロウ命名)の吸盤だらけの脚をかじりながら、僕たちは歩いていっていた。
「トキロウ達は、ずっとこの森で暮らすつもりなんだよな?」
「ああ、そのつもりだ」
「言いにくいんだけど、僕はとりあえずここから出なきゃいけないんだ」
「...ああ。なんとなく知ってた。別にいいさ。外までは案内する。」
トキロウは妖刀をがしゃりと小さく掲げた。
「全然気にするなよ?
おれが元々ここに来たのは、ただ禁足地だからってだけじゃない。
それは...」
「それは...?」
「まあ、そのうち話すさ」
「なんだよ、気になるな」
「気になると言えば今朝、耳を土に詰めてたよな?
あれはいつもそうしてるのか」
「いやあ...いつもはしてないんだ」
「じゃあ.........どうして?」
トキロウはちょっと考える仕草をした。
「まあ、その...なんだ、シロとはどういう関係なんだ...?」
すると少しの間「?」とわからない表情をしていたが、トキロウは気がついたのか蒸気がぽんと吹き出したように赤くなった。
「なっ!?聴こえてたのか...!?それともまさか...ずっと見て...!?」
「いや!見てはないよ。ただ、結構聴こえてた。」
「そうか...すまない」
「いや、別に気にしなくていい。
僕は明かりを持っていないから、案内してくれるだけでもうお釣りが雨となって降ってくるぐらいだよ」
「...なら良かった。」
顔を赤くしたトキロウはそっぽを向いて、時たまちらちらとこちらの様子を伺っていた。
(トキロウ、なんかかわいいな..)
戦いでは淡々と冷徹に魔物を殺して回る、彼の顔は傷跡だらけだ。
だが、顔立ち自体はとても美しく、美少女だと偽ることもできそうな美少年だった。
でも、だからなんだという話だった。
彼にシロという相手がいることや、僕が同性愛者ではないことなど、あらゆる条件をたとえ全部度外視したとしても、僕がトキロウを恋愛対象としてみることはない。
だって僕は、サマーブリージア王女...世界でただ1人彼女だけと結婚すると決めているからだ。
「おれとシロはパートナー...夫婦なんだ。
でも、だからってそんなこと気にしないでほしい。
俺はロゼットともわだかまりなく仲良くやっていきたいんだ。」
「ああ、僕もそのつもりだ。」
そう言って、僕は拳を突き出した。
するとトキロウは微笑んで、拳をぶつけた。
シロもその肉球で僕らの拳にぶつけた。
「よし、じゃあ行こうか。禁足地の外へ!」
トキロウはそれまで通りの頼もしい口調に戻って、そう言った。
... ... ...
それからしばらくの間、僕らは真っ黒な場所の外を目指した。
「へ〜、すごいな。こんなコンパスがあるのか」
「そうなんだよな、兄様が...
フラストノワールの第一王子ヴァント=フラストノワールが、僕にこれをくれたんだ。」
故郷のことを伝えたくて、わざと回りくどい言い方をした。
「へえ、君のその兄が作ったのか?」
「いや、見つけたんだって、遺跡で。
探窟家ギルドに同行して、探して持ってきてくれたんだ。
僕ために...
でも、もしかしたらそのうち作れたかもしれないな。」
「そうなのか?」
「花の国フラストノワールは服飾や工芸品、芸術や物づくりが盛んなのが特長だった。
だから僕がこのコンパスの有用性を広めれば、誰かが作ったかも...あるいは僕が...」
... ... ...
そして月が日が流れ、僕たちはもうちょっとで真っ黒な場所を抜けるところまで辿り着いた。
もう少し行けば、中央都市コニスカラメルとやらに辿り着く。
その緊張感と、やっと森から出られる、世界を確認できるという希望を持って、歩いていた。
もう出られる...そう思った時だった。
「えっ?」
コンパスの宝石が戻った。
歩いたら、後ろに戻ったのだ。
「これは、どういうことだ...?」
また歩いていく。だけど何度行こうとしても宝石がちょっと戻る。
出られない。
「印でもつけてみる?」
トキロウは提案した。
シロが樹木に傷をつけた。そしてそれを通り過ぎて歩いていく。
また宝石の位置が戻る。
すると...
「...っ!?」
また同じ木だった。
「同じ場所をぐるぐる回ってるってことか...出られないってことなのかよ!」
僕は流石に怒って地面を叩いた。
するとシロが僕に寄り添った。
「...おかしい。入る時は何も問題なかったのに...」
トキロウは考えた。
「はあ...お腹すいた...とりあえずご飯食べたい。
食べてから、考えることにしよう」
「...そうだな、そうしよう。」
魔物を狩る。
狙いは四足歩行の魚人間。
一見人間のようなフォルムをしているが、開くとしっかり魚の身だ。
狙いは赤身と白身それぞれ2体ずつ。
お別れパーティー的に、最後に豪勢に食べようじゃないかとそういうことになった。
僕たちは白身の魚人間を発見した。
しかし...
速い!太刀筋をすり抜け、とてつもない逃げ足で逃げていく。
それを僕たちは追っていくが、すぐ立ち止まることにした。
「なんか怪しくないか?あまり深追いしない方がいいかも」
「やっぱりそうだよな?僕もなんだか変な予感がしてた。」
僕はそう答えたが、トキロウは何かに驚いた目をしていた。
僕は後ろを向く。
すると...
「何だあれ?」
そこにあったのは、猫の形をした建物。
それも、レストランだった。
看板に『キャット・レストラン』と書いてある。だから、これは間違いなくレストランだ。
匂いにつられて、僕たちは疑いもせず、自然とキャット・レストランに入っていった。
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