21.森の鬼火と新人類?③

走って、走って、走って...


しかし、一向に真っ黒な空間から出ることはできない。

道を間違えた...!


僕は切れかけの息を整えながら、立ち止まる。

方向を変えよう。


するとその隙につけ込んで、巨大な"何か"達はまた僕取り囲んだ。

僕は剣をまたその一体に向ける。


そして走り抜けた。

その時だった。


目の前から紫色の光が、突如ボワッと現れて、僕とすれ違った。


その光はおどろおどろしくも、周りの真っ黒だった空間を明るくした。


僕とすれ違ったのは、流れるように鋭い黒髪の剣士。

そして猛々しい白虎だった。


剣士は紫色の鬼火を纏った刀を振り下ろし、巨大な相手を冷徹に切り伏せる。

白虎も相手に飛びかかり、その体を噛みちぎっては吐き捨てた。


"何か"の正体は、ドロドロとした粘液状の"巨大な泥の化け物"だった。


姿が見えれば対抗できる。

彼らが切り伏せてもまだまだ大量にいるそいつらに、僕は切り掛かっていく。


花の咲くようなビジョンはいつの間にか見えなくなっていたが、今までの狩りで切れ味が十分に上がっていたこの剣で、相手をすぱりすぱりと切り裂いていく。


何体か殺してわかった。

切り裂かれた泥は、落下し地面に着地するとともに意識を失い動かなくなる。


それを確認すると突如、僕の身体は影で覆われる。

後ろから泥の化け物は迫っていた。


しかしそれを剣士が刀で切り裂いた。


そしてその剣士に迫る泥を、白虎が噛みつきそして噛み砕いた。


最後はその白虎に迫った泥を、僕が突いた。


泥の化け物は全て、いなくなった。


...


そして僕と剣士は目を合わせると、何も言わず、手合わせを始めていた。

剣を打ちつけ、受け流し、息つく間もない剣戟の応酬。


しかしお互いの首に剣を突き立てたところで、白虎に止められた。


互いに剣をしまった。


そして僕らは目を合わせると、大爆笑しながら倒れた。

「「あーはっはっはっは!!!!」」


「あんた名前は?」


「俺は...ロゼット=フラストノワールだ」


「.........あーはっはっはっは!!!!笑える名前だな!!」


「なんだと!?」


顔が傷だらけの、黒髪の剣士。

着ている装束はおそらくセセルカグラのもの。


一般的な民からすれば、他国の...フラストノワールの名前など興味のない、知らないものなのだろうか...。


「予想通りの名前だ!」


「じゃあお前は何て名前なんだ!」


「...おれは...ええと。そうだな......じゃあ.........キ、トロ......トキ、ロー...そう、トキロウ!おれはトキロウだ!」


「.........あーはっはっはっは!!!!


いい名前だな!!」


「そうか?本当にそう思う?」


「本当にそう思う」


「「.........あーはっはっはっは!!!!」」


僕らは立ち上がって握手した。

「よろしくトキロウ。それと...?」


顔に傷だらけの剣士は、白虎を撫でながら優しい声色で答えた。

「シロだ」


「そのまんまだな...」


「よろしくロゼット。

しかしその剣、すごい切れ味だったな。盗みたい」


「えっ!?」

僕は剣を抱き抱えた。


「悪い悪い、冗談だ。大事そうにしてるみたいだし、間違っても盗んだりしない。

それを盗むのは、おまえを殺すと言っているようなものだ。」


「そっちこそ、その刀はなんなんだ?」

紫色の光を纏うそれが気になっていた。


「これは<アブリビオン>だ。」


<妖刀 鬼火の足音アブリビオン>...紫の鬼火を纏うその刀は、鳥の国セセルカグラの国宝だった。

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