前編END.休日④
「兄様」
扉を開ける。
「...!?
...ロゼットか、忙しいんだ
頭が痛いんだ。後にしてくれないか?」
「後...いつなら来てくれますか?」
「わからない...来週か、来月か、とにかく忙しいんだ
この部屋に入ってくるな」
「ごめんなさい、でもどうしても来て欲しいんです。
今日じゃないと兄様もしばらく予定が合わない...どうしてもです。」
「...」
兄は僕を睨みつけるように見つめていた。
そして目を瞑った。
「...わかった。気が済んだらすぐに戻るからな」
「はい!」
そう言って兄を連れて行く。
通り道には使用人は誰1人おらず、静かな城に足音が響いた。
「...」
その異常な様子に兄は怖がっているのか、汗を垂らしながら口角の片側が歪に上がっていた。
一方で、僕は楽しみで仕方がなかった。
兄様はきっと喜んでくれる。
きっと平常な振りをして静かに喜ぶと思うけど...
意外と泣いて喜んでくれるかもしれない。
わくわくと足取りを弾ませる。
曲線上の大階段を降りて...さらに歩いて...
辿り着いたのは庭だった。
すると長いテーブルに料理が並んでいた。
「これは...俺がお腹空いてると思ったのか?」
兄がこちらを向く。僕は笑顔で返した。
その時。
「「パン!」」
クラッカーの音。
驚いて兄はオーバー気味に避けた。
すると、机の下から人影が出てきた。
「ヴァント、誕生日おめでとう」
そう言ったのは、父だった。
「は...?」
すると、隠れていた人々が段々と出てきた。
使用人たちも含めた城の住人全員が集まっていた。
「ヴァント様、誕生日、おめでとうございます!」
「ヴァントおぼっちゃま、20歳の誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます!」
皆が口々に言った。
「兄様、誕生日おめでとうございます!
僕が誕生日の時はここにいられなくて...ごめんなさい。
兄様がくれた誕生日プレゼント、父から受け取りました。
本当にありがとうございます」
「いや...」
「だからこそ、兄様の誕生日はちゃんと兄様の誕生日に祝いたかったんです!」
「は....?いや、普通に忘れてた。今日そういや俺の誕生日だったか、そうか。」
「既に普段から政治に参加していて、あまり変化というか、20歳になったことの実感がわかなかっただろう。
探窟も始めたし、それに比べたら刺激が足りなかったよな。」
「あぁ...」
兄は事態が飲み込めていないようだった
「それでこうやってみんなでパーティをすることにしたんです!
刺激になりましたか!?」
「...は...これ...全部俺のために?」
「はい、もちろんです!」
「いつも以上に腕によりをかけて作りましたからね、ぜひ味わってください」
「ヴァント様、ぜひ楽しんでいってください!」
「...そういうことだ」
父が言った。
「...マジか...そんなの、ありえねえだろ...」
「いいや、ありえてます!頬でもつねりますか?」
「...ああ、つねれよ」
そうして僕は兄の頬をつねった。
兄の頬は寝不足のせいか肌が荒れていて、ざらざらしていた。
兄は痛かったようで、頬を労わるように撫でていた。
「...兄様、毎日大変だと思います。
厳しい世界で、辛い思いもされていると思います。今日、少しでもリフレッシュしていってくれたら嬉しいです!」
「ぼっちゃま、お料理の種類本当にたくさんございますが、まずはどれからお食べになりますか?分類すると-」
「ヴァント様、これが私的には一番好きです、おすすめですよ!」
「ちょっと!どうしてあなたがもう食べてるの!?慎みなさい!」
「そうか...そうか...」
兄は噛み締めるように言った。思ったより、感極まって喜んでくれた。
いつも怒っていた兄が、こんなに喜んでくれるなんて、とても嬉しかった。
「ヴァント」
父が呼んだ。
「兄様」
僕も続いて呼んだ。
「ヴァント様!」「ヴァント様」「ヴァントおぼっちゃま」「ヴァント様〜!」
使用人たちも続けて呼んだ。
「みんな...そんな、マジか.........」
そう言って後ろを向いていた兄は、振り向きながら言った。
「...あり
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その時、目の前の世界は一瞬にして真っ黒になった。
人も、街も、食べ物も、色も線も音も声も文字も工芸品も何もかもが消えた。
突然視界から消えて、なくなった。
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■の国■■■■■■■■は滅びました。
前編END / 中編 滅亡中に続く↓
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