10.休日①
僕たちは眺めていた...壮大で...真っ白な...
ついに完成した...
学び舎を...!!
その場にいた人たちみんなで喜んだ。
「皆様、ここまで作っていただいてありがとうございました!!
おかげで校舎が完成しました!
あとは人が入れば、とうとうここは学び舎です!」
すると作業員の1人が指をチッチッチとふった。
「ロゼットさん、まだ校舎は完成してませんぜ」
「まだ...完成してないだって...?」
そう言うと僕は連れられて、正門前にやってきた。
そうして渡されたのは看板と工具だった。
僕に取り付けて欲しいと、そういうことだった。
「僕が...いいんですか!?」
そう言いかけると、作業員は皆まで言うなと言わんばかりに手のひらを突きつけ、それを静止した。
そして何も言わず手振りと表情だけでそれを伝え、親指を立てた。
僕はただ頷くと看板と工具を受け取り、正門の壁に取り付けた。
そして僕は振り返って、親指を立て返した。
「これで今度こそ、完成ですよね」
「ええ、もちろん」
真っ白なレンガで湛えられた校舎の正門に、学校の名前を表す長方形の看板が取り付けられた。
僕はつい、その名前を読み上げた。
「セントラル・ブランク・アカデミー...!」
それが、この学校の名前。
「どういう意味なんです?
...ああっ、中央区の中でも草も木も生えてない"大陸のへそ"に建てたから、<セントラル・ブランク・アカデミー>ってことはわかるんですが...」
作業員は付け足した。
「他にも意味があるんでしょう?」
「鋭いですね。
校舎、真っ白じゃないですか。」
「それがどうかしたんです?...ああ!」
気がついた様子だった。
「白紙(ブランク)ってことですか!」
「はい!」
僕は笑って返事をした。
「まだ白紙のこの学校に、これから何十年何百年かけて歴史を重ねていって欲しい。
そしてその歴史の刻み手である生徒たち...
彼らには、一方的に知識を教えられるだけでなく、自分自身でも思い思いの研究を進めて、新たな分野を開拓して欲しい。
今後大陸全土に広まり根付いていくであろう、新たな技術や文化を生み出すための、覚え書きのメモ帳みたいにして欲しいんです!
この、セントラル・ブランク・アカデミーを。」
「覚え書きのメモ帳とは...偉大な歴史書とかじゃないんですね」
作業員の1人が笑って言った。
「はい!」
僕は元気よく返事をした。
すると、何故かみんな楽しく笑い出した。
「えっ、何ですか!?何か面白いものでもあったんですか!?」
続いて、僕も笑った。
... ... ...
「また来月から、高速蒸気機関車の路線を繋ぐ工事をお願いしますが...
その時は改めてよろしくお願いします!
それでは、ええと...校舎完成祝いパーティでもやりますか?」
「わあー!やった!うおおーー!おおー?お、ぉー...」
そう言っているのは1人だけだった。
「ロゼットさん、あなたの言う通り、まだトレイン・ポスタの路線工事が残ってる」
「...?はい」
「それ、もう来週からやっちゃおうかなって思ってるんです」
「.........ええっ!?」
「交通管理ギルドにはもう話がついてる。来週ちゃんとここまで責任者が来る。」
そして親方は僕にその言葉を突きつけた。
「だけど来週はロゼットさんには休んでもらう」
「ええ!?いや、そういうわけには行きません!」
「ずっと思ってたんだ。
自分の主導してる計画だからって首突っ込み過ぎなんじゃあないですか?
建設作業は手伝うわ、昼飯まで作ってきてくれるわ」
「えっ...?」
「そうだそうだ!」
という声が上がる。
「いえ、ただ僕は—」
「わかってますよ。
だって、目の下にクマ出来てるじゃないですか」
「...!?!?!?」
「ロゼットさん...あなたには1週間、いや1ヶ月は休んでもらいます。」
「そ、そんな!?」
「安心してください。
建設ギルドと交通管理ギルドはいきなり呼びつけて話が通るくらい、そりゃあもうズブズブの関係です。」
その間に、他の人たちが僕の周りに集まってきて、僕は担ぎ上げられた。
「!?」
「あなたがいない間に線路工事を終わらせて、次来たときにはトレイン・ポスタの快適な移動を楽しめますよ。」
「な、なんてことを...!!」
「せいぜい最後の、無人自動列車の揺れを楽しんでください。」
「うわああああ...!!!」
「ローゼット!ローゼット!ローゼット!ローゼット!」
ロゼットコールとともに僕は駅まで胴上げされながら運ばれ、荷物とともに自動無人列車へ放り込まれた。
「ドアが閉まります。黄色い線の内側までお下がりください。」
... ... ...
そして、長期休暇が始まった。
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