9.交流計画③
それからしばらくのこと。
各国に赴き、学校で教師をしてくれそうな人に交渉したり、建設ギルドの責任者に相談したりしながら、計画は順調に進んでいた。
その間僕は中央区でずっと寝泊まりしていた...なんてことはなく、なんだかんだ言って家に毎週帰ることができていた。
無人の"完全自立駆動列車"略して自動車から降りて
本当に"高速"だ。人間の叡智の賜物だと思った。
例の建設ギルドの現場の人にそれとなく「完成したらトレイン・ポスタの線路ここまで引きたいですね」と言ったら、やってくれるらしかった。
建設ギルドの責任者と一緒に、翌週すぐに交通管理ギルドに交渉しにいった。
... ... ...
ある日帰宅し、僕は窓の外を見て黄昏ていた。
仕事を進めている時はそれに集中できるが、帰宅してお仕事スイッチがオフになった途端、僕の精神は
そしてあの思考に囚われる。
「サマーブリージア=ウィンディライン王女...」
僕は声にもならないような、些細な音を吐き出した。
別に誰に聞かせるわけでもない、いやむしろ聞かれたくないと思ったからだ。
「ロゼット」
ガタガタガタとつい慌てそうになるが、すぐに何事もなかったかのように姿勢を正し毅然として返事をした。
「父様、どうされたのですか?」
「...学び舎作りは順調か?」
「はい、それはもう。校舎ももうほとんどできてきていて!-」
そうして話し切ると、父は言った。
「あー、先週、お前がいない時だったんだがー」
そう言って、父は鎖で繋がれた手のひら程度の円形の何かを取り出した。
そして、僕の首にかけた。
「...これは?」
「誕生日...先週だったろう。」
そうだった。つい先週、僕の16歳の誕生日だった。
その時僕は中央区にいた。
「...そうでしたね、ありがとうございます!」
「それ、開いてみて」
少し大きめのペンダントは蓋のようになっていた。
爪でそれを弾いて開く。
そこには"世界"があった。
「すごい...」
そう言うしかなかった。
世界地図。
でもそれはただの地図ではなかった。
ペンダントの中には海が流れ、この大陸が浮かんでいた。
地形はとても精巧に作られているように見え、そしてここ<フラストノワール城>のあるであろう場所には、二等辺三角形の小さな赤い宝石が佇んでいた。
壊さないよう、山に優しく触れてみた。けど、なんと指は通り抜けた。
他の場所をかき回してみても、それは何事もなかったように変わらなかった。
どうやら、実体がないようだった。
ただ唯一、宝石だけは触ることができた。
「凄いよな。その宝石-」
「綺麗ですよね」
「ああ、だがそれだけじゃないらしい」
「それだけじゃない?」
「なんとそのコンパス、所在地によって宝石の位置が動くらしい。」
「ええっ、そんなことあるんですか!?」
「あるらしい、本当にすごい話だ」
「でもこれ、一体どこで...」
僕が聞いた。
「ヴァントが見つけてきたんだ。」
「兄様が?」
「最近あいつは遺跡の調査に乗り出していてな。」
「遺跡の調査!?兄様は政治で忙しいんじゃ-」
「ああ。だから休息日限定で、探窟家ギルドに参加して色々探しているようだ。
やりたいことがあるなら仕事は本来通り私が全て行うから大丈夫だと言ったんだが、聞かなくてな。
週末の夜に出かけては、翌日の夕方に戻ってくる。
今日もそれで疲れて帰ってきて、もう眠ってしまった。」
「そうだったんですね...。」
「あまりにもお前が中央区とここを行ったり来たりするもんだから、対抗して何かしたくなったんだろう。
"それ"自体も本当はヴァントに、直接渡せと言ったんだが強く反対された。
お前に面と向かってプレゼントを渡すのはさすがに照れ臭かったらしい。」
「はは、今度兄様にお礼を言っておかないと」
「ああ、そうするといい。」
父は微笑んでその場を去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます