11.休日②
「風花国境前〜風花国境前〜」
僕は読んでいた"ある人からの手紙"をしまった。
無人の自動列車から下りると、まだ昼前だった。
僕はふと思った。
休日かあ...
そうか...
...何、しようか
「ぐぅ〜〜」
その時、お腹の音が鳴った。
... ... ...
お腹を空かせた僕が入ったのは、寂しさとかっこよさが同居する、どこか荒々しい木造の飯店だった。
両開きの西部劇風ドアを押して、真っ直ぐ歩いていく。
ガラの悪そうな客たちが睨んできているのがわかった。
カウンターに座り、僕は訊いた。
「マスター、おすすめは?」
「マスターだってよ、ギャハハハハ」
野次が飛ぶ。
「ローネタン。900ルコニだ。」
僕は1000ルコニ紙幣を1枚渡す。
マスターがお釣りのルコニ銀貨1枚を置くと同時に、僕は訊いた。
「マスター、ローネタンとは、なんだい?」
「知らねえのかよ、ギャハハハハ」
「名物だ。この辺の。特に、この店の。」
しばしの沈黙。
僕は口を開いた。
「ローネタンは...米料理か?それとも、マスター-
「ギャハ-
「麺と肉だ」
マスターの声で、野次馬の笑いは遮られた。
「オーケーマスター」
そして、僕は脚を組み、両肘を机につき、顔の前で指を組んで待った。
すると、野次馬たちがやってきた。
「おい坊ちゃ〜ん、どこから来たんでちゅか?」
「何でちゅか?この真っ赤な髪色は?バラみたいでかっこいいでちゅね〜!まるで王子さまみた〜い!おうちは、どこでちゅか〜?あっ、おしろでちゅか〜?ギャハハハハ」
「ここは子供が来るところじゃないんでちゅよ〜バブバブバブ〜」
「そうだそうだ!」
その時、ガン!と音を立てて黒い鉄板に大盛りにされた、橙色の麺が置かれた。
湯気とトマトの香り立つ麺。
そして短冊切りのピーマンと厚切りの牛タンが添えられていた。
極め付けに、マスターは純白の液体をそれらにかけた。
チーズだ、熱々のチーズが麺に、肉に、そして鉄板に触れ、ジュージューと音を立てる。
これが、ローネタン...
...なるほど、ローネ!そうか!輪廻転生の女神ローネか!
このチーズが、女神ローネの纏う神の衣というわけか...!
僕はすぐさま銀色のフォークを手にとり、取り憑かれたようにローネタンを食べ始めた。
「...っ!?」
「おい坊ちゃ〜ん、それ俺にも分けてよ〜!」
「どうしよう、僕ちゃんこんな量食べられな〜い!残すなら今のうちだよ〜ん?」
「そうだそうだ!」
これは...美味い!
この香ばしさ、そしてかみごたえ...
いや、下手なことを言うのも失礼だ。ただ味わう...それに集中しよう!
僕は手と口を動かし、一心不乱に食べ続けた。
「坊ちゃ〜......おいてめえ、無視するんじゃ...---ッ!?!?!?」
湯気が、出ていた。
料理からだけでなく、まるで僕自身からも闘争心の熱気のようなものが発せられていたようだった。
この料理を食べることが、まるで僕という人間の生存本能に直結したみたいな感覚だった。
食欲...さすが3大欲求の1つ...!!!
「なっ、なんだこいつ...タダもんじゃねえ...!!」
「ひっ」
「かはっ...!」
「「「ひええええええええええ」」」
そして、僕は最後の一口をぺろりとたいらげた。
「...美味しかった!ご馳走様でした!」
マスターはグラスを磨きながら満足げな顔をした。
いつの間にか野次馬はいなくなっていた。
... ... ...
飯店を出て、僕は歩いてウィンディラインのお城に向かった。
町並みを見ると、フラストノワールに比べて自然派というか雄大というか、荒々しさと優しさをまさに兼ね備えた感じだった。
フラストノワールの精巧に作り込まれた造形も良いが、こういう自然体というか、作られていない感じの美しさは参考になるな。
そして、お城についた。
兄から貰ったコンパス...宝石は緑色に光っていた。
そう、ここは風の国<ウィンディライン>だ。
時間帯は昼過ぎ...夕方に差し掛かろうとしているところだった。
僕はお城の塔を見上げた。
そして窓を見ると...そこに人影が見えた。
僕は"あの手紙"をもう一度見た。
『ロゼット=フラストノワール王子
お元気でしょうか
ロゼット王子は普段はどんなふうに過ごしていますか?
私は朝、城を抜け出して野草を取りにいっています。
昼に誰もいない岩山の谷で思い切り例のま......をたくさん打って、
野草を食べながら、夕方になる前はお家に戻ってきます
好きな野草はタ・ケノコです。
キ・ノコとタ・ケノコ、どちらも好きですが、どちらかと言うとタ・ケノコの方が好きです。
サマーブリージア=ウィンディラインより』
僕は人影に向かって思いきり手を振った。
すると人影は手を振り返してきた。
そして僕は鞄から、この日のためにずっと用意していたものを取り出した...!
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