第60話 4話 王冠と勇気(アイコンタクトは上級者?!)

 鈴木 朱音14歳中学2年生。

 大人しそうな見た目と少しふくよかとはいかないが肉付がよい、いわゆるザ日本人という感じの女の子。

 特にぽっちゃりではないが、手足が少し短いのか少しポチャッと見えるが恐らく普通の体系と言えるのだろう。

 ザ日本人の彼女がなぜここに迷い込んだのかと言えば・・・・。

「デートで告白しようか迷ってるんです!」

 先ほどの道に迷ってオロオロしていたのはどこへやら、新がガレットを出しミアが紅茶のロゼ・ロアイアルを3人分出してソファー席に全員で腰かけて少ししたところで、迷子の事はどこへやら、そんな事を言い出した。

「あの、道に迷ってどうしようって話だったんじゃ?」

 新が彼女の勢いに負けそうになりながらも、肝心な事を聞かねばと思いそう切り出すと、朱音ちゃんはスマホを取り出し新たに時間が表示された画面を突き付けながら。

「もう遅刻なのでどうでも良いんです。それより、私どうしたら良いのか」

「デート、されるのですか?」

 昨日の和也君の話を聞いていないという前提でミアが話を切り出し、朱音ちゃんにそう聞けば彼女は少し不安そうな顔をした後。

「お、お二人はお付き合いされ・・・夫婦ですよね?!」

 何をどう見れば夫婦と勘違いをされるのだろうかと、新はそう思いつつミアを見れば。

「いやぁ、そう見えちゃうんでしゅ、ひゃたいぃ、あらにゃひゃん、やめぇ」

「オイこらポンコツシスター、何見悶えながら照れてるんだ。いつからそんな関係になった?!」

 新がミアの両頬を親指と人差し指でつまむと、上下左右にグネグネと動かしながら文句を言う。

「いひゃい・・・・新さん照れなくてもぉ」

「もう1回やっとくか?」

「いえ・・・」

「あの、ホントに夫婦では? なんか仲良すぎません? 付き合ってはいるんで・・・すよね?」

 新とミアのやり取りを見ていた朱音ちゃんが、恐る恐るという感じで、ミアと新に聞いてきたので慌てて頬を引っ張っていた手をどけた。

「もぉ~、新さん乱暴です!」

「誰のせいだ。朱音ちゃんだっけ・・・・その彼とはどんな感じなの?」

 話を戻し新がそう聞くと、なぜか暗い表情になったかと思えばすぐに泣きそうな顔になり不安そうにしながらぽつりぽつりと呟く。

「で、デートには誘えたんですけど・・・誘った時の反応が良くなくて。嫌われてるのかなって・・・」

 昨日の話でもそうだが、やはり和也君の反応が良くなかったことで相手に不安を与えてしまっている。

 両想いであるのにちょっとしたすれ違いが大きな誤解を生むことはよくあるが、こういうのはあまり納得できるものではない。

「そんな事ないと思います!」

 そんな事を考えているとミアが勢いよく机に両手を突き立て立ち上がり、グイッと顔を近づけて力いっぱいに断言するミア。

 圧倒され、少し顔を引きつりながらも先ほどの不安が少し和らいだのか、ぎこちないながらも少し笑う朱音ちゃんを見て、こういう時はこの強引さが役に立つなぁと新は思った。

「それで、告白をしたいって事なのかな?」

「告白・・・・・・」

 新が率直にどうしたいのかを問うと、俯き、真剣な眼差しで考え始める。

 新と未菜は顔を見合わせながら、これほどまでにお互い想い合っているのに、何とも言えない歯がゆさがあるなぁと、お互いに視線を合わせながらミアと会話する様にアイコンタクトを送る。

「あの・・・二人って本当にお付き合いされてないんですか?」

「逆になぜ、付き合っている前提出来てくるんだい?」

 なるべく相手を威圧しない様、注意を払いながら問いかけると。

「アイコンタクトしてるし、お互いに言いたい事ややりたい事とか、お互いをこう、尊重し合ってて熟年夫婦みたいです」

 新は若干歩を引きつらせミアに視線を向けると。

 ミアは(もぉ、熟年夫婦なんてそなぁ)みたいに両手を頬に当てながら、くねくねと身もだえていたので、新は見なかったことにしてお茶を飲み、窓の外に目を向け。

「今日もいい天気だなぁ」

「外曇ってますけど・・・・」

 こういう時に限って曇り始めた空は、新の想いどうりにいかないどころか、誤魔化す事すら許してくれない様だった。

 そんな早朝の和やかなペチュニュアは、朱音ちゃんと和也君の今後を見守る事がほぼミアのこの反応で確定したのでした。

「(俺・・・何してるんだろう)」

 新の心の叫びは無視されている事は、言うまでもなかった。

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