第61話 4話 王冠と勇気(油断と甘々は不意に・・・・)

「ミアさんや、いくらなんでこれは・・・・・」

「うふふ~ん」

 上機嫌なミアを横目に新は心の中で深いため息をつくだけでなく、自分の身の危険があるのだがという突込みをこの横で能天気に笑みを浮かべながら、新の腕に体を抱き込むような形でしがみついているミアに呆れる。

 目の前に広がるのは家族連れやカップルの波、その先には楽しそうなアトラクションが所狭しと並び、エリアごとにそれぞれのテーマにあった配置のされた区画が遠目にも見て取れる、つまりは遊園地に来ていた。

 正確には、大型テーマパークだ。

 見渡す限り人であるのこの場所で、目の前を歩く初々しいカップルになり切れていない哲也君と朱音ちゃんを見ながら新は深いため息をついた。

「どうしたのですか? 二人の今後がかかっているのですよ!」

「・・・・なぜここに来た・・・・」

「え? 駄目なんですか? 楽しそうな場所じゃないですか?!」

 確かに楽しそうではある、あるのだがチョイスがマズイと新は声を大にして言いたくなっていた。

 この大型テーマパークは、デートスポットとしては良く選ばれるが、それと同時に、カップルが分かれるきっかけになる場所とも言われる、いわば天国と地獄のような場所だと新の中では位置づけられている。

「あのな、言いたい事は山のようにあるが、ここ監視カメラがとんでもなく多いんだ」

「そうなのですか? 何か問題が?」

「俺がどういう立場で、なんでペチュニアと教会に居るか忘れてない?」

「私の事が大好きだからですよね?!」

 屈託のない迷いのない笑みでミアが言うので新は、驚くとか唖然とするとか恥ずかしいとか以前に、思考が停止してしまった。

 こいつ今何を?!

 そう思いイラっとしたので、腕にしがみついているこの手を思いっきり振り払ってやろうかと、新は腕に力を入れようとしたが、ミアの屈託のない純粋な笑みを見ていたらどうしてもそれが出来なくなり、うなだれる。

「どうしました?」

「もういい・・・好きにしろ」

「はい、好きにしますね!」

 迷いのない返事が新に投げかけられ、もういいやという気持ちになった。

「大丈夫ですよ。何があっても私は新さんのそばに居ますから」

「ふぁ?!」

 顔を少し下げうなだれていたところに、ミアが何を思ったのか耳元でそっと優しい声音で新たにささやきかけた。

 あまりの唐突な不意打ちに、まったく身構えていなかったところにまるで重たい一撃を急所に当てられたかのようになり、全身に火が付いたかのように暑くなり、顔が真っ赤になっているのを新自身で感じてしまうぐらいだった。

「さぁ、お二人をサポートです」

 あいも変わらずなマイペースなミアにドキドキさせられながら、デートを見守りつつ、なんとなくこれもデートなのではないだろうかという気に、新は薄々ながらなりかけながら、付かず離れずな感じで和也君と朱音ちゃんの後を付けるのだった。


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