第56話 4話 王冠と勇気(伝統とインスピレーション)
「ご、ごめんなさいぃ~」
「五月蠅い黙れ・・・・」
翌朝、色々我慢の限界だったため、うまいことうまく処理をし、綺麗にしたところで自室に戻れば、ミアが起きていて開口一番に誤ってきたのだが、その乳白色の滑らかな肌が朝日の明るく、強い日差しに反射し、とても艶めかしく映り、新を先ほど綺麗に終わった新を再度誘惑してきていた。
こいつは悪魔?!
そう問いたいぐらいには新はイラっとしていたので、先日新の部屋に置いていったキャミソールを手に取るとミアに向かって投げつけた。
「とりあえず頼むか着てくれ」
「はい・・・」
流石に反省が見える。シュンとして、気持ち元気無さそうに謝りながらキャミソールを受け取るとスッと頭を通してそれを着た。
「よしき・・・ゲホゲホ、もういいや、俺とりあえず顔洗ってくるわ」
そう言い、新はそそくさとその場を後にした。
先ほど、渡したキャミソールが思いのほか似合っており、服を着ていない時よりきているときのほうがなん十倍も破壊力があったため、新は選択をミスったと思いながら逃げる様にその場を後にしたのだった。
「私・・・魅力ないのかなぁ?」
一人勘違いをしながら少し不安げに自分の胸元を見ているミアは、朝日に照らされながら新とは真逆の方向を向いていた。
朝の一悶着はあったけども、それでも1日はやってくる。
朝食を済ませ、2人仲良く教会を出てペチュニアへ。
ミアは厨房、新は店内の掃除をして開店準備を始める。
ふと新は気になったことがあった。
「なぁ」
「は~い・・・・どうしました?」
ベールではなくナプキンを付け、髪も縛ったミアが厨房から出てくる。
生地でも練っていたのか、エプロンにも彼女の頬にも白い粉がついていた。
「ほら・・・」
「ぅうぁ~ん。それで、何ですか?」
ミアの顔の周りについていた小麦粉を拭いてあげる新。
されるがままにされていたミアは、終わると新に用件を聞いた。
「いつも作ってるお菓子あるじゃん。アレ、どいう基準で作ってて、お客様にどういう基準で出してるんだ?」
「というと?」
言われている意味が分からず、ミアは小首をかしげる。
新自身、何をどう伝えればいいのか計りかねていたが。
「つまりだな。どうぞ、って言いながら注文も聞かずに出すときあるだろ? あれどういう事だ?」
「あ~、う~ん。インスピレーション?」
「なんで疑問形でこっちに聞いてくるんだ。聞いてるのは俺なんだが?」
どうやら本人にもあまり自覚やらが無いらしく、新の質問の意味は分かったが、その中身までは具体的な基準がないのかいまいちはっきりとしない。
「今日はガレットデロアですよぉ~、あとリーフパイとぉ、アップルパイです!」
「パイ多くね?」
「パイ生地作るのだけで大変なので、パイ系を出すときはこんな感じになります」
嬉しそうに微笑むミアに、なんだか毒気だとか色々なものが抜かれた新は、素直に意味はあまりなかったかぁと少し残念に思いながら、作業に戻った。
それから3時間後、特にお店が混むことはなく、適当に新だけでもさばける人数で回り、気が付けばお昼となっていた。
お昼ちょっと過ぎにどうやらすべての作業が終わったらしく、逐一出していたお菓子とは別にガラスケースに残りのパイ系が並べられた。
「ガレットデロアって・・・なんだ?」
朝聞いていこう、聞きなれない菓子の名前に新は少しうずうずとしており、ミアに余裕ができたこのタイミングで聞いてみたくなり、問いかけた。
「ガレット・デ・ロアですか?
フランスの代表的なお菓子で、年明けやお祝い事などの時にはパン屋さんやお菓子屋さんにも並ぶお菓子ですよ。
家庭でも作られるお菓子で。
見てくださいこれがですね、王冠に見えるじゃないですか。
このお菓子の楽しみはですね、中に小さなフェーヴと言われる陶器のお人形が入っていてですね、そのお人形が当たった人が、その日一日王様や王妃様になり、王冠をかぶって皆から祝福される。っていう行事もあるんですよ」
面白いでしょ? と言って同意を求めてくるミアに、どう答えたらよいのか新は分からなかったが、お菓子一つとってみても歴史や伝統、文化があるのだなぁと思い知らされる。
そんな話をしている時だった。
カラカラぁ~。
入り口のドアが開き、来客を知らせるベルが鳴る、ミアと新はそろっていらっしゃいませぇ、と声をそろえて来客に向かって挨拶をしたのだった。
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