第54話 3話スズランの心(真相と猿芝居)

「ただいまぁ」

「お帰り。助かったよ」

「いえいえどう・・・・なんで居る。てかどういう事だ?!」

 ペチュニアのドアを開け、何とかバレずに帰還すると、カウンター席にサイドポニーのジーンズの似合うお姉さんが腰かけていた。

「アンタ、どういう事だこれ!?」

「あ~、簡単に言うとだなぁ。現在の家族がピンチだったんで。私の生前積んできた徳を神様に行って使わせてもらってな、こううまい具合に導いたもらったというか。

 孫を助けるためだったんだ。すまん!」

 結構気持ちのいい性格をしている人なのか、素直に事情を話し頭を下げてきたので、新としても怒るに怒れなくなってしまった。

「これ、いったい何がどうなった話だったんですか?」

 カウンター席に腰かけ、疲れた体を投げ出すようにして新はテーブルに突っ伏する。

「最初に接点を作らせるために、丁度いい時代の息子をここに招く。次に私の生前の時の一番大切にしていた、今回の発端になったものを私が無くし、必死になっているのを見せつける。

 その際、最初に息子が来た時もそれとなくその無くした今回の原因であるスズランの栞を見せておく必要がある。

 で、最後は孫が頑張りました。

 というのが大きな流れで大雑把な説明だったのだが・・・」

 そこまで聞いて、何かがおかしい事に気が付き、その何かが恐らく新の直感ではなく確信に変わったので、その原因の人物に視線を向ける。

 視線を向けられた人物、ミアはすかさず視線をそらした。

 なので、新は立ち上がると、素早い動きでカウンター内に入りミアの頭部を鷲頭神にして無理やり自分の方を向かせた。

「みぃあぁ~」

「なな、何か御用ですか?」

「グルだったんだな?」

「私何もしてません・・・・・」

「ほっほぉ~・・・・・新さん新さん見てください!」

「何ですかその恥ずかしい私!」

「恥ずかしいのかぁそうかぁ。で・・・グルだったんだな?」

 再度視線をそらそうとしたミアの顔を固定し、新から逃れようと視線を動かすミアの目の前に自分の顔を近づけた。

「ごめんなさい・・・でも、私は役割の関係でこれしかできないんです」

 だとしても俺に言えばよかっただろ?!

 そうは思ったが言うのを止めた。

 彼女は彼女なりの事情があるのだろうし、それについてかの自余が話したいと思って居ないいじょう、無理に聞き出す事ではない。

 今回危ない橋を渡りはしたが、それでも何とかしてくれるだろうと、そう思ったから今回新が動くように仕向けられたのだろう。

 しかし、一番食えないの・・・・。

「おい婆さん」

「この麗しい乙女を捕まえて婆さんはないわよ」

「見た目なん、どうせ死んでるんだから変えられるんだろ?!」

 何かの本を読んだ時に見た事がある、人は死後、自分が生前で一番輝いていた時の姿であの世に行くことができる時があると。

 恐らくだが、彼女の今の状態こそがまさにそれなのだろう。

「お助け便利屋じゃねぇから。まったく・・・・それで問題はなさそうなのか?」

「そうね。ありがとう、私が手を出せるのはこの1回限り。でもね、孫娘にはまだ1回ぐらいはあるから、もしかしたらまた来るかもねぇ」

 女性はケラケラと笑いつつそんな事を言っていたが、あながち間違いでもないかもしれない。

「お兄ちゃん」

「うん? 俺は帰るぞ。長居すると危ないからな」

「えっとね。ありがとう。もし、また困ったらお兄ちゃんの所に助けてもらいに行くね!」

「あ~、遠慮したいんですけど」

「お兄ちゃんは私の優しいお兄ちゃんなので、ちゃんと助けてくれます!」

 確信の籠った眼で、断言する様に言われた手前、助けないというのは目覚めが悪く、内心ではため息をつきながらも仕方ないと思っていた。

「ロリコンか?」

「おい婆さん・・・ほどほどにしないとマジで怒るぞ」

 怒りに震えながら忠告する新たに、老人はクスクスと笑う。

「ロリコンて何ですか?」

 意味が分かってない人物がそう質問してきたので、婆さんがそれに応じようとして。

「知らんで良い」

「え~、良いじゃないですかぁ!」

 教わろうとするミアを捕まえて引きはがす、すると駄々をこねる子供のように、頬を膨らませ、むぅ~と唸りながら新を見つめるが、新はそれを無視した。

 こうして、一連の出来事と、黒幕が誰なのかは知れたが、新としては二度とごめんだと思う出来事であった。


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