第45話 2話狐の面とカモミール(懐かしさと、蚊帳の外?!)
朝食が終わり、今日もペチュニアでの1日が始まる。
先日の命が言っていた連れてくるという言葉がどういう意味なのか、新としてはいまいちわかっていない。
すると、電子音が遠くの方から聞こえてきて、何かが止まる音が聞こえた。
まさかと思い、ペチュニアを出て音のしたほうへと行けば、ライトレールが止まっていて、そこから数人人が出てくる、その中に見覚えのある2人組が居た。
「お・・・にい・・・ちゃん?!」
「連れてきましたよ」
今日はお面をしておらず、本来の彼女その者がそこに居た。
落ち着いた顔立ち、整った顔、少し癖のある鼻立ちと大きくもなく小さくもない唇。
フレアスカートに、白のブラウス、紺のカーディガンの見た目清楚系文学少女がそこに立って居て、新を見て固まっていたかと思うと、スニーカーを勢いよく蹴り上げ、走り出し新の胸めがけて飛び込んできた。
「うぉいっ!」
あまりに唐突の行動に慌てながらその体を受け止めた新。
彼女特有のレモンバームの香りが鼻を付く。
その匂いが新にはとても懐かしく、心がスッと落ち着く感じがして、ここに居るのが七海であると実感して胸が熱くなる。
七海はだいぶ成長しているのか、女性らしさが際立ち、出るところがしっかり出ている、要は巨乳さん出会ったようで、新に抱き着くとその豊満なクッションがふにゃりと新の胸に押し付けらる。
ブラウスとブラ越の感触、そこから伝わる体温の柔らかさに、どうしても男として反応をしてしまい、頬が緩みそうになるのを新は必死でこらえた。
ミアとは違う暖かさと、大人の女性としての色香に少しくらくらする。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
よほど新たに会えたことがうれしいのか、新を呼びながら顔を埋め、腰に回した腕は力いっぱいに。
まるで、もうは慣れてやらない、どこにも行かせないと言わんばかりの力の強さで、少し痛いとさえ思うほどの強さだった。
しかし、それほどまでにこの子を心配させていたのかと思うと、少し申し訳なくも思った。
「そろそろ良いか?」
流石にらちが明かないと悟ったのか、命が静かだけど力のこもった有無を言わさぬ声で問いかけてきた。
その声に反応するかのように七海が新の胸から離れる。
顔はぐちゃぐちゃで、せっかくのお化粧が少し崩れかけていた。
「七海、化粧崩れてる」
「え、やだ。恥ずかしい」
「とりあえず2人ともペチュニアへ」
ここでこうしていても良くないので、新はペチュニアへと足を向けたのだった。
道中速まで遠くは無いが、七海は視線をあちらこちらに向け周囲を興味深そうに観察する。
やがて森林を抜けた先に、1軒の小さな木造のお家と、その奥に大きな教会が姿を現した。
見た目ほど大きくは無いが教会も少し離れればそれなりの大きさなのだと、新も初めて知る。
カラカラ~。
来客を知らせるベルとともにドアを開け中に入る。
普段ならばいらっしゃいませ~、などの声がかかるのだが、来客の中身が分かっているためなのか、それともミア自信の中で何かがあるのか、そういった声はかからなかった。
なんとなく嫌な感じは昨晩からしていたが、どうやらあまり歓迎はされていない様だと、新は改めて昨日からの彼女の変化について思う。
「そこ、座ってて」
「あ、うん・・・・み、命様。私どうすれば?」
「普通にしてなさい」
七海は不安になったのか、命にどうすればよいのか聞いているのを新は背後から耳にして、初めてこの2人がちゃんと会話しているのを感じる。
「新さん・・・・コレ」
カチャカチャと音を立てて、トレイにお茶のセットを3つ用意し新に渡す。
「あれ、3つしかないぞ?」
「新さん居れて3名ですよね? 何かおかしいですか?」
まるでそれが当然のことのように言うミアに、なんで自分は入っていないのかとため息をつく。
新は一度カウンターにトレイを置き、カップとソーサラーをもう一人分出す。
それをトレイに乗せ。
「来い」
一言強めの口調で新がミアにそう言った。
若干怒っている声音に何かを感じたのか、ミアは少し困った様に視線を彷徨わせたが、ミアが動かないと動かないぞ、そう言われている様に新が動くことをしなかったため、ミアは一つ溜息をついてカウンターから出てきた。
「素直でよろしい」
「・・・・」
不平不満があるらしく、ジーと感情の読み取れない顔で新を見るミアに少しだけ圧を感じるが、新はそこをグッとこらえて、ミアを引き連れ命と七海の元へと戻った。
「今淹れてやる・・・・お前はそこに座れ」
「むぅ~!」
恐らく強めに言わないと聞いてくれないだろう、そう思った新はミアに普段は絶対にしないよう少し強めの口調で言いつけると、合っとくいかないという目で見られながら、それでも新の指示に従むミアの刺すような視線を受ける。
2人のやり取りに、七海は目を細め、少し不満そうな顔をする。
七海の前に座ったミア。
「お綺麗ですね。シスターさんですか?」
七海が最初に人当たりのよさそうな笑みを浮かべながら問いかけると、ミアはええとしか答えず、特に会話をする気が無いらしいことがすぐに読み取れたので。
「にゃ、にゃにを?!」
「五月蠅い黙れ。普段どうりにできないたびにやってやる」
「フニフニしないでください!」
「いやなら普通にしてろ」
「分かりましたよ・・・・人の気も知らないで」
知っている。
だからこそ変な態度は控えるべきだろうと、新は思っていた。
現代に戻るのは社会的に死んでしまった新には実質上無理だろう、それでもこうして訪ねて来てくれた古い幼馴染にそういう態様はしてほしくない。
助けてもらった恩はあるし、しっかりと今の状況などを説明するにもいてもらわないと困ると思った。
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