第40話 2話狐の面とカモミール(幼馴染の想いと、ミアの想いと)
ミアは教会に膝ま突き、許しを請いながら願う。
どうか、迷い人を導くお許しをと祈りながら。
そう思っていた。
願っていた、はずなのに。
「何をしているのかしら、私・・・・」
問いかけた疑問に答えてくれる人や神様はおらず、いつもこういう時の祈りに答えてくれるアレも今日は沈黙を決め込んでいた。
いつからだろうか、このような場所に居る事が当たり前で、現実世界には自分の居場所なんて存在した無いと思うようになってしまったのは。
別にそれは間違いではない、この場所に生きたままたどり着いてしまった時点で、皆一様に世界から拒絶された人間なのだと、そうミアは思っていた。
実際、ミア自信はそういう経緯でこの場所に居る。
ただ、居場所として許されたからこそ居続ける事が可能にもなったともいえた。
そして、もう一人、世界に拒絶された人が現れた。
最初は興味本位だった。
どうんな人が、どんな理由でこの場所に来たのだろうと。
仲良くなれるかな?
お友達になれるかな?
私の事、怖がらないかな?
そんな不安を抱えながら、びしょ濡れの男性を運んだのをよく覚えている。
もしかしたら襲われるかもしれない、酷い事をされてしまうかもしれない。
有り得ない話ではないし、ミア自信はすでに成人もしているのである程度世の中の流れや最低限の知識や貞操観念はある。
それでも、一人で十数年この場所に居続けてしまった彼女にとって、すがれる相手が現れてしまったのは変化の兆しだったのだろう。
「どうすれば・・・」
本人の迷いの言葉は虚空へと吸い込まれるかに見えたが、その答えがすんなり示された。
一枚の紙が彼女の元にひらひらと舞い落ち、目の前に綺麗に落ちる。
そこには一言「招く」という言葉が出ていた。
「そうですか・・・」
喜べば良いのか、悲しめばよいのか。
ミアの心の中はぐちゃぐちゃになっており、今は何も見えてこない。
ただ一つ分かるのはその答えを出せるのは、ミアではなく、新と七海さんだけだという事をミアは良く分かっていたのだった。
しばらく出て行っていたミアが戻ってくると、おもむろに服のポケットから一枚の紙を出し、それを命に差し出した。
「パフェ美味しかったぞ。さて・・・・良いのか?」
「許可は下りております。お好きになさってください」
ミアの顔は許可は下りているとは言っているが、まるで納得していないし、好きにしろと言いつつ連れてこないでほしいと思っているのが目で見て明らかである。
「お主、どうしたい?」
「俺に振るかぁ・・・・本人に聞いてくれ。俺はこの場所から戻れないし、戻る当てもない」
新としてはそう答える以外に選択肢はなく、堪えられることなど少ない。
しかし、視線はどうしてもミアにいってしまうし、彼女の真意は気になるところである。
行き倒れ救ってもらった恩人で、少しずつ心のケアも恐らくしてくれているのだと思うし、新自身その実感もある。
だからこそ彼女に嫌われたくはないし、彼女の意志は尊重したいと思っていた。
「そ、なら連れてくるわ。後は当人たちの話よ。私がしてあげられるのはここまで」
「命さん、すまない、七海が」
「良いですよ。今時珍しく進神深い人だし。それに想いの強さは本物で、私もその想いのおかげで割と元気に動けておりますから、お気になさらず」
どういう理屈なのかは新たには良く分からないが、神様には神様なりの事情というものがあり、どうやらその事情を満たしてくれているのが七海らしいという事は、今の話で理解はできた。
話自体はまとまり、それでは後日連れてくると言い残し、命さんは姿を消した。
突然現れ、音もなく消え去る神様に新は目をしばたたかせて、今見ているものが現実なのかと疑いの目を向ける。
そんな、突然の来訪者との邂逅だったが、それと同時に新自身はいまだに機嫌があまりよろしくなさそうなミアの事が気がかりだった。
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