第39話 2話 狐の面とカモミール(心と想いと、想いの強さ)

 突然の来訪者は頭に狐の面を少し斜めにしており、紫を基調とした銀色や金の花模様の着物の刺繍が色鮮やかに描かれたものに身を包んでおり、一目見ただけでも高そうなものを着ていると思わせる、

 さらに髪の毛にはこれまた煌びやかなかんざしがの様なモノ刺さっており、ツインテールでまとめているため、左右にかんざしの様なモノがある。

 彼女が動くたびにかんざしの様なモノが煌びやかに揺れ、気品を感じる。

「どちら様?」

 聞くのが怖いが、聞かねば何も始まらない。

 新は意を決してそう聞くと、彼女はパフェを食べつつ。

「私は、織姫稲荷神の系統で、名を命(みこと)と言います以後主知りお気を新お兄ちゃん」

 命と名乗った少女は、新たにウィンクして再度パフェへと戻って行ったので、新はミアに視線を向けどうするべきかと思っていると。

「どうぞ、命さん」

「あ、これはご丁寧に。釜炒り茶か?」

「はい。お口に合えば幸いです」

「すまんな。いただきます」

 ナチュラルにお茶を出し、特に気負う事無くいつも通りミアは接客をしていたので新は言った何なんだよと、内心突っ込みたい気持ちでいっぱいになった。

「えっと、七海とはどういうはどういう関係で?」

「君が好きすぎて、私の所に毎日お参りに来る関係」

「・・・・・」

 何も言えねぇ。

 新は言葉を失いつつ、これは間接的に聞いてしまっても良い話だったのだろうかとしばし悩むが、もはや手遅れなので今のは聞かなかったことにしようと思ったが、約一名大変不機嫌そうな顔で新を見ている人物が居た。

「あの、ミアさんや。なんです?」

 新は怖くてはっきりとは聞くことができず、なんとなく濁して聞くが、ミアは隠し事が苦手なのだろうか。

「私だって新さん好きです!」

 お前はポンコツかぁ!

 本人目の前にして言う事ではないだろう。

 そんな新の内心事情を放置して命が新を見てミアを見た後、さらに新を見て。

「何で帰らないの?」

 普通に疑問だろう事を投げかけてきたので、新は一つ溜息をした後自分の現状がどういった状況なのかを神様らしい人に話した。

「あぁ~、そういえばそんな事言ってたなぁ。でもまぁ、行きてるのもあっちとしては分かったみたいとはいえ、はっきりとした証拠が欲しいだろうし。手紙を書いてください」

「拒否権は?・・・・」

 新としては自分が生きている、もしくは存在しているとなる証拠自体は現状あまり残したくないのが本音である。

 ブラック企業は倒産し、ほかの社員たちも蒸発したのか、身を隠したのか、はたまた自分の人生を終わらせてしまったのかは良く分からないが、どちらにしろ、現状で最高重要参考人らしいのは新らしく、当然、その証拠や痕跡となるモノは関係者や関わりのある人から回収しようとしたり、少しの手掛かりですら警察は血眼になって探すだろう。

 そういう事情がある以上、書けと言われておいそれと書けるものではない。

 新が躊躇していると、ミアがう~ん、と唸りながら何やら考え始め。

「ちょっと待っててください・・・・聞いてきます」

「え、聞いてくるって何を? 誰に?」

 新の問いかけに答えることなく、考えに耽りながら再度ミアはペチュニアを出て行ったのだった。

「追いかけなくてよいのか?」

「多分話しかけても耳に入ってないだろうから、放置で」

「冷たいねぇ」

 愛すと口にしながら言ったので、そは新が冷たい人間だねぇという意味なのか、それともアイスが冷たいだけなのか、どっちなのかとどうでも良い事を考えながら、命を眺める。

「なんじゃぁ。浮気か?」

「勘弁してください。ついでに誰とも付き合ってませんから」

「なんだ童貞か・・・・」

「品性! 神様とか関係なく品性をですねぇ!」

「品は私ある方だと思うのですが?」

 確かに品のある雅な格好をしているにはいる、しかしだ、品性と品があるはべつな気がする。

 ミアに拾われ、ペチュニアに来て色々な神様との交流や、死人、迷い人との対話を何度かしてきた新だが。

 神であれ、人であれ、死人であれ、感情表現や想いなどは誰でも持ち合わせており、それぞれにそれぞれの考えがあるのだとういう事を、新はココに来て思い知らされた。

「面倒な神様ですねぇ」

「その面倒くさい神様にお願いして、優待離脱している君の幼馴染も大変面倒くさい子ですねぇ。素直に好きっていえばいいのに。なん十年思いつ付けてるのかねぇ」

「は? ドユコト?」

 新としては、大人になってからほれられたかなぁ、ぐらいの感覚なのだろうと思っていたし、どうせ時がたてば忘れてくれるだろうとそう思っていた。

 実際指名手配されてしまい、もう現実世界に戻る事がかなわないいじょう、死んだも同然だろうと思っている。

 しかし、それはあくまでも新だけの話であって、新としては七海には彼女の人生があるのだから、素直に好意としてはうれしいが、その想いに答えてあげられる手段を今は持ち合わせていない事に、落胆する。

「小さい頃から来ていたぞ、うちの社に」

 新はどうしたものかと思いつつ、幼馴染の、昔から可愛がっていた女の子の胸の内を土足で歩いているようなこの感覚に、いたたまれない気持ちになりながら、もう何も言うまいと思いながらこの神様を見ていた。

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