第37話 2話 狐の面とカモミール(パフェの甘さと、甘酸っぱさと)

 意を決して、新は手に持っていたスプーンでパフェのクリームをすくいとる。

 パフェは、デラックスとか言うわりに普通で、特に変わり映えのしないイチゴやフルーツが載っていて、チョコや、コーン、アイス、ベリーが散りばめられたいたって普通のパフェに見える。

 クリームをすくったスプーンをお客様である彼女へと向ければ、彼女はすんなりとそれを口に入れた。

 すると、両手を自分の頬に当てて、身悶えながら頬を緩ませる。

 ヤバいナニコレ、可愛い。

 新はお客様である事を忘れ、思わず見ほれそうになる。

 新の反応が気になったのか、女性は小首をかしげ、どうしたの? という表所を向けてきた。

「あ、えっと。はいどうぞ」

 誤魔化すようにして、今度はアイスの部分をすくって差し出す。

口に含むと少し冷たいのだろう、足を少しパタパタとさせながら口をすぼめる。

すると不意に、肩を叩かれたので振り返ると、そこにはミアが目の前にいるお客様の女性と同じように、口を大きく開けて待ち構えている。

「え、なに?」

「・・・・」

 どうやらミアも堪える気はないらしく、ただひたすらに、その口を大きく開けながら新の行動を待っていた。

 ややこしい事になったと新は思いつつ、これお客様のだよなぁと思いながらもすくい上げ、ミアの口に入れた。

「おいぃひぃ~」

 ミアが自分の作ったパフェを食べて感動している。

 新とミアのやり取りが気に入らなかったのか、無理やり新のかをがっちりと両手で掴むと、女性客は自分の方へと新の顔を向けさせた。

「ああ、悪い。はいあ~ん」

 なんとなくだがしてほしい事が分かったので、新はまたクリームと今度はチョコがかかった場所をすくい食べさせる。

 今度は感動していないなぁ、と思いスプーンを引き抜こうかと思ったのだが引き抜けず。

 あれぇ?

 とか首をかしげていると、そのスプーンを女性は奪い、自分の口からスプーンを抜き取ると、クリームをいっぱいすくったかと思えば新の口に突っ込んだのだ。

「ふぅっ! うまい・・・じゃなくて危ないわ!」

 勢いもあったので、スプーンを口に突っ込まれたのは少々危険だと思い、食べ終えた後に注意したが、女性の頬と首筋が目に見えて分るぐらいに真っ赤に染まっていた。

「自分でやっておいて、真っ赤になるのはおかしいです!」

 ミアが新の背後から怒った口調でそう言い放つ。

 そこで初めて新はミアが怒っているのを見たかもしれないと思った。

「わ、私だってした事ないのに!」

「お~い、ミアさん、なんか変な事言いだしてない?」

 新の心配をよそに、次々に問題発言を繰り返し、ついには新たに抱き着いた。

「み、ミアさんや、放してくれませんかね?」

 ミアも混乱しているのだろうが、一番混乱していて何が起き得居るのかさっぱり分かっていないのは他でもない新自身で、どこのラブコメ展開だよ! と内心ではツッコミを入れていたが、自分にそんな事が起こるわけがないと、思っていたため、たいして気には止めていなかった。

「うぅ~」

 もはや威嚇して唸っているミアの腕をポンポンと叩き、開放を促してやると、渋々といった形で新を開放した。

 やれやれと思って正面を見れば、お面の女性が。

「やっと会えた・・・・」

 初めて声を発したかと思えば、彼女の姿は霧のように霧散し、すぐに消え去ってしまった。

 新は何が起きた理解できずに、彼女の座っていた場所を見る、そこには確かに彼女が居たのだろうが、すでにその姿は消えており、どこにもない。

「はぁ、新さんちょっと来てください!」

 思った口調で新の手を握り立たせたかと思うと、足早に教会へとミアは足を向けたのだった。

 新はと言えば引きずられるようにして、何が起きているのかさっぱりわからんという様に、混乱しながらその後を付いていくしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る