第34話 1話小さな来訪者(炒飯と照れ隠し)

 絵里奈が去っていき、また2人となった。

 ペチュニアがだいたい5時頃に閉める事もあり、絵里奈が居なくなった事をあまり感じずに済むと思っていたのだが。

「いや、まぁはい」

 自室でゆっくりし、そろそろ夕食だなぁと思ってリビングへ行くとそこにはテーブルに突っ伏した状態のミアが居た。

 居たのだが、机と彼女の腕の服がしっとりと湿っており、目元も泣きはらしたような跡が見て取れた。

 どうやら泣きつかれて寝てしまったのだろう、心地よさそうに寝息を立てている。

 当然、夕食の用意などされておらず、新はどうするかと思いながらあさり始める。

 冷めたご飯に、ベーコンと玉ねぎが半分、卵2個があった。

 この食材で出来ることなど一つしかない、炒飯である。

 フライパンに油を敷きつつ、久しぶりの料理に胸を高鳴らせながらどんどん調理をこなしていく新。

「うぅ~ん・・・・ふぁぇ?」

 調理を開始し、少し時間が過ぎてそろそろ完成。

 背後で何かが動く気配がし、振り返ってみてみれば、寝ぼけ眼のミアがズレたベールを直す事もせず振り返り新を見ていたので、新はその間抜けさに少し吹き出しそうになる。

「あらたしゃん?」

 おまけに呂律も回っていないらしく、舌足らずな言葉が飛び出してくる。

「夕飯、炒飯だが食べるか?」

「ふぁぇ? ゆう・・・・夕飯!」

 そこでようやく覚醒したらしく、慌てて席から立ち上がると壁に立てかけてあった時計に目をやる。

 時計はすでに19時を示しており、いつもならば夕食の時間であることを示している。

 しかし、先ほどまで夢の中に旅立っていたミアが夕飯の用意などできているわけもなく、慌ててとりかかろうとして小首をかしげた。

「何で新さん台所に???」

「だから夕飯だよ。食べるだろ?」

「え? あ、あい・・・はい?!」

 まだいまいち状況がつかめていないミアに席に着く様に促し、新は皿を出して炒飯の二人分に分ける。

 炒飯調理中に見つけた冷凍餃子をスープにし、中華スープを作ってそれも一緒に添える。

「どうぞ」

「い、頂きます?!」

 いまいち彼女の中でまだ混乱をしているらしく、反応にためらいが見られるが、新は気にすることなく席に着き食事をする。

「美味しいです!」

「そいつは良かった」

「新さんお料理で来たんですね」

「炒飯だけは得意なんだ」

 ニコニコと嬉しそうに食べるミアを見て、良かったと新は胸を撫で下ろした。

 恐らく本人は気が付いていないだろうが、いまだに泣きはらした後が残っており、頬にも涙が流れた時にでる線のような跡がくっきりと残っていた。

 恐らくだが、この人は毎度誰かを見送るたびにこういった心境になっているのかもしれない。

 いつか自分が元の世界に変える時にも、彼女は同じように泣いてくれるのだろうか?

 そんなあさましい事を考えてしまい、慌てて首を左右に振り今の邪な考えを打ち消す新たに。

「どうかしましたか?」

「何でもない」

 新はぶっきらぼうに答えながら、自分の作った炒飯をかきこむのだった。


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