第30話 1話小さな来訪者(ギュ~)

一緒に寝ると言っても、1人用のベットに大人2人と子供一人である。

 ベッドが大きめのダブルベットであるとはいえ、手狭である。

「わーい、今日はお姉ちゃんも一緒だぁ」

 ミアが一緒であることに喜びを体全体を使って表現する絵里奈に、子供の純粋な素直さが羨ましいと新は思った。

「新さんは私と寝られて嬉しくないんですか?」

「なんで今、俺に話をふったんだ?!」

 わざとではないのかと言いたくなるような絶妙なタイミングで話をふられ、新は顔が暑くなるのを感じつつも、気が付かないふりをして少し不満げにミアに言う。

 ミアはそんなら他の初々しい反応に、悪戯を思いついた子供のようににやりと笑みを浮かべると。

「絵里奈さん。新お兄ちゃんはお姉ちゃんが大好きみたいですよ」

「え~、ソウナンダァ~。エッチなことしちゃいけませんよ?」

「するか! てかノリノリで何言ってんだマセガキ!」

 ミアが冗談めかして絵里奈にそう言えば、絵里奈も何かを感じ取ったのかソレに乗っかり、あろう事か新を嗜めるかのようにそういう。

 調子にノリだした絵里奈に、少し強めに新が言い放つ。

 新も、ヤバい、言いすぎた。 と感じて少し焦ったのだが、思いのほか彼女は怖がっておらず、クスクスとミアと一緒に笑い合っていた。

 二人の幸せそうな、楽しそうな姿を見て、新はまぁ良いかぁと少し諦めながら一人先にベッドに入ると、それを追う様にして絵里奈が潜り込んでくる。

「お兄ちゃんの横が良いなぁ」

「好きにしろ」

「新さんと抱き合いたいなぁ」

「好きに・・・オイ待て何言ってる、お前は!」

 壁際の方へと身を寄せ、ベッドの端へと身をもっていく。

 新のその背中に絵里奈がすかさず抱き着く、

 小さな掌で新の寝間着をギュッと握り、少し服が引っ張られる感覚を味わいながらそう言うと、新の何気ない一言にミアがベッドにもぐりこむと同時に、絵里奈を挟むようにして新の服をギュッと掴みながらそう言ってきた。

 抱き着くのではなく、ギュッと掴むことに意味でもあるのだろ。

 事実、新は胸が高鳴るのを自身の体で感じ、絶対に振り返れないと内心で焦りを見せた。

「お兄ちゃんは恥ずかしがり屋ですよお姉ちゃん」

「そうみたいですね、一緒にギューッてしましょ!」

「おいバカ、やめ・・・・」

 新の素直な反応が、逆に二人の母性を擽ったのだろうか、調子に乗って二人して新たに今度はしっかりと抱き着いてきた。

 背中に小さな暖かさと、ミアから感じるフワリとした柔らかさと暖かさ、そしてほのかに香、女性の大人としての色香と匂いが鼻をくすぐる。

 当然、男である、反応しないわけもなく、新はヤバいと思いながら必死にばれない様に、動かないようにしながら、音が生理的に反応してしまう所を抑えた。

 しかし、それがいけなかったのだろう、ミアの抱きしめる力が妙に変化し、息が少し荒く感じる。

「あのぉ~ み、ミアさん・・・・」

「ひゃっい! わ、わた、私は見てないしきいてないし、気づいていませんよ!」

 分かっているなら離れてくれ!

 そう叫びたくなる衝動をグッとこらえる新。

 今は絵里奈が居る。気が付かれるわけにはいかないし、大人として、年上としての威厳やらプライドがあるので、新は必死にこらえた。

「お姉ちゃん?」

「絵里奈さん、そろそろ寝ましょうねぇ」

 リモコンでミアは部屋の灯りの強さを弱くしていく。

 不思議そうにしていたが、すぐにその疑問は無くなったのだろうか、スヤスヤと寝息を立て始めたのだった。

 それを背中で新も感じ、ほっと胸を撫で下ろす。

「悪ふざけがすぎるぞ」

 振り替えることなく新がそう言うと、ミアが再度新の服をギュッと掌で掴んできた。

「少しはしゃぎすぎてしまいましたね」

 恐らくミアなりの気遣いがそこにあったのだろうし、彼女が感じている不安もまたあったのだろう。

 新はそれ以上何も言わず、そっと目を閉じる。

 ミアは新たにそのまましがみつき、新もまたそれを良しとした。

 絵里奈ちゃんはそんな二人にはさまれながら、穏やかに寝息を立てていて、新は、なんでこんな事に、と内心思いつつもこれも悪くはないな、等と思いながら意識が沈んでいくのを心地いいと感じて、静かに眠るのだった。

 

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