第18話 1話 小さな来訪者(ロイヤルミルクティーのその先は・・・)
「どうぞぉ」
そう言い女の子の目の前にティーカップではなく、手で掴みやすいマグカップを置いたミア。
女の子はマグカップをホークを横に置き、両の手でしっかりと摑まえる様にもつと、恐る恐るその中の液体を口に含んだ。
液体は琥珀色で紅茶ではあるのであろうが、少し何か違う気がするものだった。
「美味しいです! これはなんて飲み物?!」
クロカンプッシュを食べた時のような、輝きに満ちた目でミアを見て興奮気味に問いかける女の子。
「それはロイヤルミルクティーですよ。
ハチミツとミルク、アッサムで作りましたよ。砂糖だと健康に悪いので、ハチミツにしてみましたが、お気に召していただけたようで良かったです」
ミアがそういって微笑むと、女の子もそれにつられたように微笑んだ。
新はそれを見て不覚にも胸が高鳴り、顔の体温が少し上がったのを自身で感じ。
(俺は何をしてるんだ?!)
内心で焦りながらも、平静さを装っていた。
「私、紗理奈って言います。お姉さんお名前は?」
「私はミアよ。そしてこのお兄さんは新さんです」
「なんで俺の紹介のほうが自慢げなの?」
ミアが身振り手振りを力の限り使い、仰々しい感じで新を紹介したものだから、新は少し気恥しさを感じて照れつつも一応同等とするが、内心(ふざけんなよ、超恥ずかしいじゃねぇかよ!)と思ってた。
「なぁ、紗理奈ちゃんはどうやってここに来たの?」
新はこの勢いで今気になっている事を聞いてしまおう、そう思ったのだが。
「私、死んだのよ」
「はぁ? 今なんて?」
耳を疑う言葉と、恐らくこの都市の事もから聞くことが絶対にないだろう言葉が耳に入り、新の脳内は一瞬でパンクした。
しかし、ミアは特に気にした様子はなく、先ほどと変わらない笑顔を彼女に向けているし、今衝撃の言葉を発した張本人も特に変わることなく笑顔でクロカンプッシュを口に運びながら、ロイヤルミルクティーでのどを潤していた。
新一人だけがまるで取り残されたかのような、そんな感覚に陥る。
「新さん、ここは異界ですよ死んだ方も当然きます」
「何さも当たり前ですよ、みたいに言ってるんだ!」
「死んだ人も、癒しは必要なのですよ」
いまいちミアが何を言っているのか理解に苦しむ新ただったが、ミアはそれが当たり前ですというような、そんな態度を示していた。
「絵里奈さん。本日お泊りになる場所はどうしますか? それともこのまま冥界か天界へ?」
「う~ん、分かんない。私ね、何かやり残したことがある気がするんだけどね、何なのか分からないの。そもそも何で私死んだの?」
ミアの問いに曖昧な返答をした後、おそらく誰も堪える事は出来ないだろう事をミアに聞いてきた。
「あ~、えっと少しお待ちいただいてよろしいですか」
そういってミアは慈しむ様な微笑を浮かべた後新を見て。
「せっかくなので、私のお仕事を見に来てくださいな」
そう言うや否や、新の手をその細くて柔らかな手が掴むと、新を引っ張る様にしてペチュニアを出て行こうとする。
「オイ待て、あの子は?!」
「大丈夫だと思いますから、さぁ、行きましょ」
新が慌てふためく中、ミアは笑みを絶やさずにそう言う。
その笑みが、新は少し怖く感じたのは気のせいではなかったのかもしれなかった。
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