第17話 1話、小さな来訪者。(クリームと女の子)
「・・・・」
パチパチと花火がはぜる音が響き、白い閃光がクロカンプッシュを照らし出す。
そんな光景を少女は無表情のまま見つめた後、新を見て、ミアと見た後クロカンプッシュを指さし。
「なにコレ?」
「シュークリームタワーケーキですよぉ」
間違いではないが、少し違うような気もすると新は心の中で思いつつも、ここで口を挟もうものならば話が進まないのではないか。
新は直感を信じ、ぐっと出かけた言葉を飲み込んだ。
「シュークリームってケーキにならないよお姉ちゃん」
「このシュークリームケーキはね、結婚式とか、お祝い事の時に作る特別なケーキなの、だからね・・・・」
「誰か結婚とかしたんですか?」
的確な返しである、新はそう思いながらミアを見ると、ミアの方から大変泣きそうな顔をした目で新に助けを求めていた。
いやまて、俺に振るな。という目を向け苦笑いしながら。
「このお姉ちゃんの頭の中で結婚式が行われたみたいだよぉ」
新は精一杯の笑顔で女の子にそう言葉を投げかける。
女の子は新を見て、ふぅ~ん、と何を考えているのか良く分からない相槌をうった。
「食べて良いの?」
少し期待と不安の入り混じった眼でミアとみる女の子に、ミアはどうせケースに入らないし、という一言だけを言った後、首を縦に振り頷いて女の子にホークを手渡した。
クロカンプッシュにホークを指すと、シューがサク、プシュッ、という音が耳に聞こえるぐらいサクサクであるという事がすぐにわかる。
生クリームと恐らくはカスタードクリームであろうもので、シューとシューの間を接着する様に固められていた部分のクリームを、女の子はうまくシューにからめとりながら付け加え口に運ぶ。
「ふぅ~ん!」
口に入れた瞬間女の子の目は見開かれ、キラキラと輝きながらミアを見る。
そんな彼女の素直な表現に、ミアは素直な笑み浮かべ、どうぞぉと言いながら女の子に食べる様に促すと、目をキラキラと輝かせながら一生懸命に食べ始めた。
「ロイヤルミルクティーでも入れてきますので、見ていてあげてくださいね」
「いや、えぇ」
新が何かを反応する前にミアは鼻歌交じりにカウンターへと向かった。
新は手持無沙汰になり、見ていてくれと言われても何をすればよいのかと悩んでいると、女の子は食べるのに夢中になっていて、ほっぺや鼻先にクリームの白いのがちょろちょろついていて、それはそれで可愛らしいのだが後でべたべたになってしまうのではと思い、仕方ないと思いながら近くにあった紙ナプキンを取ると。
「ほらこっち向きなさい」
女の子の顔の向きを自分に向かせてクリームをふき取る。
最初嫌がられるのではないだろうか、という不安があったのだが、女の子は抵抗する事無くそれを受け入れ、新たにされるがままとなった。
クリームが拭き終わるのを待っていたかのように、女の子は再度クロカンプッシュへと突撃していくので、よほど気に入ったらしいことはそれを見ればわかる。
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