第12話 紅茶の種類は多いのです。
「アルファーマンゴー、ベニア、ダルマ、黄金系、白桃烏龍、巨砲、アールグレイ、アッサム、ローズ、ベコニア、ミルフォア、ホワイトグリア、うわばみ茶、インドアッサム、アップルティー、ソレイユルビン・・・・」
ミアから紡がれるもはや暗号なのではないかと思われる単語を、一つ一つリスト化していく。
新は横で自由気ままに紡がれる言葉を、ただただ一言一句逃すことなく入力していく。
社畜であり、ブラック企業につとていた彼手に取って、タイピングと、人のいっている事をそのまま文字化する事はもはや義務とかのレベルで難なくこなせていた。
むしろこれがこなせないと、罵声やモノが飛んでくるのがブラック企業あるあるである。
思わぬところで自分が今までしてきたことが役に立っている事に、新自身も苦笑を隠せずにただそのまま苦笑しながら作業をしていた。
「凄いですね。私ただ言葉を言っているだけなのに、一文字も間違ってません」
「あ~、気にしないでくれ」
「本当にすごいです」
「・・・・・」
これぐらいできて当たり前だ! そう言われ続けてきた手前、こうして素直に感動されてしまうと、新としても少し照れ臭く、ミアの顔が見れない。
ミアはと言えば、新が難なくこれをこなしている事に、キラキラと目を輝かせながらわぁ、と良い感動していた。
「それより、これで全部か?」
「いいえ。あと150ぐらいありますけど」
「・・・・・帰っていいか?」
「どこに帰るのですか?」
「はぁ~。ともかくこれだけでもリスト化したから、印刷して作業だな」
「はいぃ~!」
恐らく素なのだろうツッコミを新たに入れたミアに、新は話をそらしつつそう促すと、ミアはすぐにそれに乗っかってくれて微笑みかけてくれた。
彼女の純粋さに救われたなぁと思いつつ、俺はいったい何をしているんだと新は自分の現状を嘆く。
リストをまとめ、印刷をしそれをミアに渡すと、ミアはそれを家宝かのように大切に大切に抱きしめたので。
「ほら戻らんと、お客さん来てるかもだぞ」
「あ、そうでした!」
新は照れくささを誤魔化すようにして促すと、思い出したかの様にミアは慌てて紙をもってペチュニアへと戻って行った。
やれやれと思いつつも、新はパソコンで少し作業をしてから部屋を後にした。
ペチュニアに戻ると、鼻歌交じりにミアが在庫整理に勤しんでおり、とても楽しそうな姿が目に飛び込んでくる。
店内を見渡すと一人だけ、ポニーテールが良く似合う学生服の女性が紅茶を片手にカウンター席で寛いでいた。
新は会釈をしつつ、エプロンをしてカウンターに立つとそのポニーテールの女性がこちらに視線を向けた。
切れ長の目が新をはっきりととらえ、新はたじろぎつつもその目地からに先ほどの未菜さんと同じような感覚を体が感じ取る。
「あのぉ、何か?」
「新人店員さんかな?」
「新と言います。えっとぉ、そこで鼻歌歌ってる人に拾われました」
「ほう、拾われたのか・・・・まぁ良いんじゃないか。しばらく居れば」
何を思ったのかそれだけを言うだけ言って新たに興味を無くしたのか、再び紅茶を楽しむのに戻ってしまった。
「新さん、おかえりなさい。紹介しますね、こちらは未菜さんの上役の神様で、寿様です」
「上役って何???」
ミアの紹介に気になる部分があったため、新は素朴な疑問をミアに投げかけたのだった。
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