第10話 素晴らしかったです。

 新が頭の中に思い出したことをどうやら未菜が神様? としての力でも使ったのだろうか、何とも言えない含みのある笑みを浮かべつつ、少し頬を赤らめたものだから、新は慌ててこんばんの夕飯に食べたいものはこれだというものを想像し始めた。

「あら、ミアさんカレーが良いそうですよ!」

「いや、だから読むな見るな!」

 見えているのがほぼ確定するような事を言い出したので、新はげんなりした声で未菜に言うが、彼女は特に気にしたふうでもない感じでニコニコと微笑んでいた。

「カレー、お好きなんですか?」

 ミアはと言えば、少し声を弾ませつつ、新をしたからほぞ着込むようにして上目図解にそのような事を聞いてくる。

 新はうぅ、っとたじろぎつつ、まぁ、とボソっとだけ呟くと、ミアは材料あったかなぁ、などと声に出しつつ考え始めた。

「いやまて、何もカレーにしなくていい。これはだな、この人が人の考えを覗き見・・・」

「裸体のミアさんをご想像されてたんですよねぇ」

「お前ぇ」

 あえて言わせない様に頑張っていた新の努力虚しく、未菜があっさりと口を開いた。

「ああ、ごめんなさい、はしたないモノをお見せして。どうしても寝る時は裸じゃないと寝れないんです」

 何故か大変申し訳なさそうにしながら、まるで怒られた子供のようにか細い声でいうものだから、新はまてまてぇ、違う、そうじゃないと口を開きかけ、ここで自分そんな事を言い出したらまるで裸が見たいと言っているようなものではないか。

酷く混乱しながらも、自問自答をし始める新を見て、未菜は微笑ましそうにしている。

「ち、違わなくなくもないし。えっとだなぁ、大変素晴らしかったです」

 新は諦めて、ミアに頭を下げながら素直な気持ちを伝えてしまった。

 35年も生きているのだ、今更女性の裸体の一つや二つ見ているし、大人のビデオでもよく見ているのだ、今更である。

「え、ありがとうございます。未菜さん、褒められてしまいました!」

「良かったですねミアさん」

「・・・・・」

 花が咲いたかのように嬉しそうに微笑みながら、ミアは未菜に報告してピョンピョン飛び跳ねている。

 ツッコミを入れたい衝動と、もっと慎みと女性としての恥じらいをもてと口から出かけて、新はミアのそのかを見たらなぜか無性に口から出かけた言葉を飲み込みたくなってしまい、そっと口を閉じた。

 そんな新の様子を横目で見ながら、ミアは慈しむように二人を見比べて微笑んだのだった。


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