第六話 前編
夕方、最後の客が商品を買って出ていった後、それを見送ってから暦は喜久夫に視線を向けた。
「花枝さん、本日もお疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした。やっぱり、お客さんは多いですね。皆さん、本当に幸せそうな顔をしていて……見ているこっちまで幸せな気持ちになりました」
「お花を買う理由は色々ですが、大体は明るい意味での贈り物ですからね。さて……そんな幸せに関する花言葉を持っているのが今日の子なのですが、この子には哀しい花言葉もあるんですよね」
そう言いながら暦が手に取ったのは、一輪の黄色い花だった。
「この花は……?」
「この子はフクジュソウといいます。幸福の“福”に“
「本当に幸せに関する花みたいですし、そんなに哀しい花言葉があるようには見えないような……」
「人生と同じで幸せばかりが花言葉ではないという事ですね。もちろん、悲しい事ばかりでも無いんですが。それでは、この子のお話を聞いてみてあげてください。この子が経験してきた悲しき思い出を」
「……わかりました」
喜久夫は頷きながら答えると、暦からフクジュソウを受け取る。そして息を小さく吐いて気持ちを整えてから耳をゆっくりと近づけた。
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