第三話 後編
「……このアスターにもこんな過去があったんだなぁ……」
アスターからの話を聞いた喜久夫が呟くと、暦はクスクス笑った。
「中にはもっと壮絶な過去を持っている子もいるので、その時には更に驚くと思いますよ」
「壮絶な過去……ですか」
「はい。このアスターのような菊は仏様に供える時の仏花ですし、彼岸花はお墓の近くなどの日当たりの良いところに咲いていますから、色々な過去を持っているものなのです」
「なるほど……」
「もっとも、他の花達も色々な過去を経験してきていますから、これからも色々な話を聞く事が出来るはずですよ」
「それは楽しみです」
喜久夫は微笑みながら言っていたが、ふと何かに気づいたような顔をした。
「語部さんは何か日常的に思い出すような過去ってあるんですか?」
「過去というよりは、この花達と出会った時の事は度々思い出しますよ。花枝さんはどうですか?」
「……自分はそんなに無いですかね。あまり追憶に更けるなんて事はしてこなかったので」
「そうですか。ですが、それも別に悪い事では無いと思いますよ。言い換えれば、いつも未来を向いて生きているという事になりますから」
「……そうですね。それじゃあそろそろ着替えてきますね」
「はい」
バックヤードへと喜久夫が向かった後、それを見送った暦は花達を軽く見回してから鼻歌混じりに店内の花達の水やりを始めた。
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