四月二日 四つ葉のクローバー
四つ葉のクローバーである私は、見つけた者に幸運を呼ぶとよく人間達から言われている。その理由は四枚目の葉っぱがもう一つの幸福を加えた事になるからのようで、他の葉っぱにはそれぞれ“信仰”と“希望”、そして“愛”という意味があるようだ。
けれど、四つ葉のクローバー本人である私にはそんな幸運など訪れない。そう思っていたが、ある日、私にもそれが訪れた。
「えっと……あ、あった!」
春らしい気候が気持ちのよいある日、黒い三つ編みの少女の顔が私を見下ろした。その顔はとても嬉しそうであり、この子もまた幸運を呼ぶ私を欲して探していたのだろうと思い、実際にはつけないが心の中ではため息をついていた。
そして少女は、その表情のままで私をむしりとると、パタパタと忙しない足音を立てながらどこかへと走り始めた。
それを聞きながら私は今度はどうなるのかと考えた。これまで私をむしっていった人間達は私を見つけた事に満足して放り出してそのまま枯らしたり押し花のようにして飽きたら捨てたりとぞんざいな扱いばかりしてきた。
その上、そうしてきたのがこの少女と同じくらいの歳の子ばかりだったため、私はまた同じような目に遭うのかと少し辛い気持ちを感じていた。
そして走る事数分、少女は挨拶をしてから一軒の家の中に入ると、家人達に会釈をしながら先を急ぎ、そのまま一つの部屋の中へと入った。
そこにはベッドに横たわる短い黒髪の少年がおり、少年は少女の姿を見て嬉しそうに微笑んだ。
「こんにちは、
「そうだよ! ようやく見つけたの、
「そっか……なんだかごめんね。これまで大変だったでしょ?」
「ぜーんぜん! だって、黒葉君のためだもん。これくらいへっちゃらだよ!」
「光葉ちゃん……」
黒葉という少年が驚く中、光葉は少し照れながら私を枕元に置いた。
「黒葉君、この四つ葉のクローバーがあれば絶対に良くなるよ。それで、病気が治ったらウチの
「……うん、僕もだよ。光葉ちゃん、ありがとう。大好きだよ」
「……うん! 私も黒葉君がだーい好き!」
光葉と黒葉は嬉しそうに笑い合い、私は光葉を疑った事を恥じると同時にこの少女の助けになりたいと感じた。私に本当に幸運を呼ぶ力があるかはわからない。だが、少しでもそれがあるならば、私はその力を発揮しよう。私に幸せをくれたこの子供達にも幸せのお裾分けをしたいから。
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