2-2

「はー……」

 灯籠の光が優しく地面を濡らし、地面を薄く染めている夜の色に重なり、静かな雰囲気に拍車を掛ける。そして何よりも和の香り、とでもいうのだろうか。とにかく新鮮さが、美しさが、侘しさが、漂っている。

「きれいだね」

 俺は秋の言葉にうなずくことしか出来なかった。いや、きれいなんかじゃ足りない。今の俺にはこの風景を言葉に起こす語彙力が圧倒的に足りない。

 一歩、踏み出す。眼の前に広がる世界がぐっと身近になり、夢の中にいるかのようだと、思わず錯覚してしまう。こんなにも素晴らしいものが世界に存在しているなんてなんで今まで知らなかったんだろう。

 日が落ちていくにつれて闇が深まり、灯籠の光が淡く増していく。

 秋が先に歩き出す。俺は秋の背中を静かに追いかけた。秋の背中が景色に溶けていく。まるで泡沫人のように儚げに染まっていく。そんな秋の存在を確かめたくて、すっと手を伸ばす。

 その手は、何も掴まなかった。

 中途半端な状態で固まった俺の手は、空間を持て余す。秋が振り向き、不思議そうな顔をしていった。

「何してんの」

 俺は手を引っ込める。

「いや、なんもない」

 さっきまで考えていたことをいうのは流石に恥ずかしくて、俺は嘘を付いた。

「なんもない、って言って無視するほど私は優しくないんだけどなぁ」

 秋はニヤニヤと笑いながら言った。流石に言えない。秋が消えていきそうで怖かった、なんて言えるはずがない。

「本当に何も無いから」

 俺は自分に言い聞かせるように言った。

 秋は「ふーん」と、やはりニヤニヤしながら言う。

「仕方ない。私から慈悲を与えよう」

 秋はひらりと前を向く。きっと俺は無意識のうちに呑まれているのだ。この和の雰囲気に当てられているのだ。きっと秋も。

「意味わかってんのか?」

 あえていつものように俺は言い返した。すると案の定、秋は振り向いて予想通りの言葉を口にする。

「なんか響きが良かったから」

 そして秋は景色に溶けていった。俺はゆっくりと後を追いかける。秋のように消えれなくても、ゆっくりと同化できるように。道なりに歩いていく。すると、居酒屋らしき店の前で男の店員が客を呼び込んでいた。いい匂いがする。炭で肉を焼いている匂いだ。

「なんか食べたくなってきたね」

 いつの間にか隣に来ていた秋が、お腹を擦りながら呟く。確かに。まだ五時になったばかりだけど、肉の香りのせいでか空腹が全身を蝕んでいる。

「ふらついて、なんか良いものあったら食べる?」

「うんうん。そうしよ」

 秋が喜々として同意する。俺は秋の顔を尻目に、少しだけ歩くペースを上げた。日が落ち切り、空が真っ暗になってより灯籠の灯りが強まったときに、秋が「あっ」と、嬉しそうに叫んだ。

 急に隣で叫ばれたもんだから俺は顔をしかめた。

「どうした」

 俺は目を細めて秋に聞く。秋は少し先の家を指さしながら、本当に嬉しそうに俺に向かって言う。

「古民家レストラン!」

「え?」

 俺は秋の指さしている家を見る。俺から見たらただの古民家にしか見えない。入り口の扉の横に窓がある。それと看板らしいものもない。誰がどう見てもただの古民家だ。

「よく見て、窓から料理を運んでるお兄さん見えるでしょ?」

 そう言われて俺はじっと目を凝らす。うん、わからん。俺は隣に居る秋をちらりと見る。こいつはどれだけ視力が良いんだ?

「よく見えないけど」

「ま、入ったらわかるって」

 秋は俺の腕をがっしりと掴み、俺が逃げないようにか足早に向かう。特に抵抗する気もなかった俺は大人しく連れて行かれる。

 秋が扉を開けると、そこには秋の予想通りの光景が広がっていた。襖で所々仕切られているが、店内はなかなか広い。畳で換算すると多分四十畳くらいはあるんじゃないだろうか。身近なもので例えるなら、教室がほんの少し大きくなった、という認識だろうか。背後で扉がぱたんと閉じる。

「すいませーん」

 秋が零すように言う。すると扉が閉まった音で気がついたのか、はたまた秋の声でやってきたのかは分からないが、優しそうな雰囲気の眼鏡をかけた二十代くらいの男性がやってきた。深緑の落ち着いたエプロンを着ている。そのエプロンの胸ポケットからは、メモ用紙らしきものが出ていた。

「ご予約されていますでしょうか?」

 男性がしっとりとした声で聞いてくる。予約? まさか予約制のやつなんだろうか。

 俺がオロオロとしていると、秋が動じた様子もなく、凛とした態度で言った。

「はい。予約した煤白です」

 男性は胸ポケットから小さく折りたたまれたメモ用紙を取り出し、視線を滑らせると、「はい。二名様でご予約の煤白様ですね。お待ちしていました」と、言った。

 俺は思わず秋を見る。秋は困ったように首をかしげ、笑った。店員の男性に導かれて、二階の座敷に座る。女性の店員がお冷とメニューを置いた。

 床が少し高くなっていて、掘りごたつのようになっている。席も襖で仕切れるようになっていて小さな個室のような印象を受けた。俺は席に座って、向かいに座った秋を見つめる。秋はにへらな笑みを浮かべ言った。

「サプラーイズ」

 そう言われた途端、さっきまでのことが腑に落ちた。窓から店員が料理を運んでいた、なんて嘘だったんだろう。ここでご飯を食べるように仕向けたしょうもない嘘だったのだ。

 秋はにへへ、と笑いながら言う。

「朔の好きそうな場所だったからさ、思わず予約しといたんだっ」

 語尾に音符が付きそうなほど嬉しそうに話す。

「幼馴染の好みなら誰よりも分かってる自信あるわ」

 秋はにへへ、と笑った。楽しそうに嬉しそうに。

「そっか、ありがとう」

 そんな顔されたら何も言い返せない。ただ、感謝を伝えることしかできない。あとから秋のために土産でも買ってくか。

 小さな対抗心を燃やしながら、置かれていたメニュー表を秋の方に向ける。

「あんがとー」

 秋はメニュー表を眺めながら、どうしよっかなーなんてぶつぶつと言っていた。

「決めたっ」

 秋はそう言ってメニューそ指す。おろし大根の和風ハンバーグだ。

「じゃあ俺はさばの味噌煮定食で」

 メニューが決まると、いつの間にか来ていたあの男性店員が「メニューはお決まりでしょうか」と、聞いてきた。秋は気にした風もなく、「和風ハンバーグとさばの味噌煮定食でー」と注文した。店員が繰り返して、一階に降りていく。

「あの人、エスパーじゃない?タイミング合いすぎてたんだけど」

 秋が苦笑する。顔には出さなかったがどうやら秋も思っていたらしい。

「側で聞いてたのかな。いつの間にかいたけど」

 俺が呟くと秋も「うんうん」と言いながら頷いていた。耐性ない人だったら失神とかしそうだな。頭を振って、しょうもない考えを弾き、俺はお冷で唇を濡らす。

「で、これからどうするんだ?」

 俺は聞く。

「ああ、ホテルに行っきますっ」

 どうせ、「ヒミツー」とか適当にはぐらかされると思っていたけど違ったようだ。

「ほへー」

 やっと一人でゆっくりできるらしい。和室だったらいいな。俺は一人、期待と夢に胸を膨らませながら、思いを馳せる。秋が口を開く。

「あと……」

 が、すぐに閉じた。

 なにか重要なことでも言い忘れたのか、それとも言うほどでもないほど些細なものだったのか……きっと後者だろう。もし前者なら途中でやめないはずだし。俺は気にせずに、ちまちまとお冷を飲む。

 お冷が半分を切ったこところで、秋の和風ハンバーグと俺のさばの味噌煮定食がやってきた。

「わー来た」

 まるで小学生のように目を煌めかせながら、秋はハンバーグにフォークを向ける。一口分に切り分けると、断面からじわりと肉汁が溢れて、大根おろしのソースに混ざっていく。口に放り込んで、熱さと格闘したのちに、「うまっ」と幸せそうに呟いた。

 俺も箸を取って、さばを食べやすい大きさに切り分けて、ご飯に乗せて、同時に食べる。口の中に一瞬に広がる優しい味わいは、やっぱり日本で産まれて良かった、なんていう感想を抱かせた。

「美味い……」

 秋は俺の零した言葉を聞いて嬉しそうに笑った。

「旅行、来てよかった?」

 秋はハンバーグにソースをつけながら俺に聞く。

「秋風に吹かれるのも悪くはないかな」

 俺は秋から目をそらして言う。「ははっ、カッコつけちゃって」と秋が笑う。さっきの言ってしまった事を思い出して、無性に恥ずかしくなって、俺は黙り込んだ。秋も静かに食べ進める。久しぶりの静寂が訪れた。

 俺がゆっくりと料理を楽しんでいると、向かいで秋は食べ終わっていた。なんとなく申し訳なくなり、ほんの少し食べるペースを上げる。が、秋が俺の様子に気がついたらしく「ゆっくり食べていいよ。まだ時間あるし」と、甘い言葉を紡がれた。結局、秋の言葉に甘えて十分くらいかけて食べた。とても美味しかった。店の落ち着いた和の雰囲気も相まって、どこか得した気分になる。

 食べ終わった後の余韻に浸りながら、俺は今日の事を振り返る。急に秋に呼ばれて、流されるまま県外に来て……。まだ始まったばかりだ。振り返るほどでもない。

「そろそろ行こっか」

 秋は立ち上がる。俺も足に力を入れて立ち上がる。ほんの少しの物足りなさを感じながら、俺たちは一階に降りた。今回も俺が奢った。秋には「いいって。私が払うから」と言われたが、流石にこれ以上秋に借金を増やすわけには行かない。ほとんど強引にだけど俺が払った。それくらいはさせてほしい。

 店から出ると、灯籠の灯りが優しく俺達を迎え入れる。まるで夢の世界だ。

 夜なのにそこそこ人通りがあった。いや、夜だからこそ人が来るのか。寒い中、ここには来る価値があるんだ。

「バスに乗ってホテルまで行きまーす」

 間延びした声で秋が言い、歩き出す。この幻想的な風景に慣れ始めている自分が居ることに虚しさを覚えながら俺は秋の後ろをついていく。

 さあ、一日目ももう終わりに近づいている。

 バス停に着くとすぐにバスが来た。秋、時間管理完璧だな。俺は心の中で拍手を贈る。

 バスに乗り込み、来たときと同じ場所に座る。まるで汽笛のようなタイヤの空気の抜ける音がして、バスが徐々に動き出した。

「なんか夜のバスって幽霊とか出そうじゃない?」

 秋が唐突に俺を見て聞いてきた。なんかバライティ番組でそういう幽霊が出るのがあった気がする。そのせいだろうか。

「ちょっとあるかも」

 俺がそう言うと、秋は間延びした声で、「だよねー」と、小さく呟いた。

 疲れていたのか、秋は特に話さなかった。俺も必然的に話さなくなる。バスの走行音だけがはっきりと聞こえる。そのほんの少し耳障りな音は、耳にこびりついて離れそうもない。秋は隣で眠たそうに欠伸をして、冷え切っている小さなお茶を飲んでいた。そのおかげで今、僕は現実にいるのだと、そんな当たり前のことに気がついて、まだあの幻想的な儚さに囚われているのだと気がついた。

 アナウンスが入る。聞いたことのない地名だった。当たり前だろうけど。何度も何度も、知らない町の知らない地名を聞いていると、自分の体を使っているのではなく他人の体に自分が乗り移ってるだけではないかとそんな妄想をしてしまう。それだったら俺が幽霊みたいじゃないか。

 秋がボタンを押した。止まります、と赤く光るボタンが俺がしっかりと俺の体を使っているのだと認識させた。バスから降りると、囁くような波の音がした。

「海?」

 俺は暗闇に視線を向けて独りごちる。

「近いよ。海」

 秋が俺の疑問に答える。俺と秋は波音に耳を傾けながらゆっくりと歩き出す。街頭がぽつりぽつりと地面を白く染める。隣で秋が欠伸をした。

「ねむ」

 小さく秋が呟いた。長時間の移動で疲れが溜まったのだろう。いつもよりも言葉に覇気がない。ゆっくりとした足取りで町を歩いていく。視界の先に建物が見えた。ホテルだ。

「あ、あそこ」

 秋が建物を指差す。秋の声は若干、覇気が蘇っていた。ホテルを見てテンションがあがったんだろうか秋がリズムを刻むように歩き始める。俺よりも数歩先で笑みを浮かべていた。

「さて、今日の最終目的地はあそこです!」

 そう、元気よく言いながら走り出した。俺は小さくなっていく背中を追いかける。軽く走るために息を吸うと、潮の匂いがはっきりと感じられた。俺はランニング程度のスピードで秋の背中に追いつく。

「なんで走るんだよ」

 俺は白い息を吐く。秋は頬を赤く上気させながら言った。

「なんか、そういう気分だったの!」

 秋の感じている気分は到底わかりそうもなかったけど、なんとなく俺は走るスピードを徐々に上げた。

 ホテルの前に着く頃には秋も、俺も肩を上下させていた。冬なのに体は異様に熱くて、体の体温を無理やり下げるようにして冷たい透明度の高い冬の空気を貪る。

「なんで……急に、スピード上げるんだよっ!」

 秋はかすれた声を上げる。俺は顔に笑みを浮かべるだけに留めておいた。

「疲れた……」

 小さく呟いて、ふうと息を吐いた。目の前にはなかなかでかいホテルがある。簡単に表現すると豪華とか美麗とか優雅、とでも言えば良いんだろうか。とりあえず、すごかった。

「え? これ大丈夫? ホテル、間違えてない?」

 どう考えても高校生が泊まれるようなホテルじゃない気がする。

「大丈夫大丈夫。合ってるから」

 秋はひらひらと手を動かしながらロビーに入っていく。俺は秋の後ろについていく。本当にあってるんだろうか?ちょっと心配である。自分には似合わない瀟洒しょうしゃなロビーを歩いていく。

「チェックインやってくるから座ってて」

 秋はそう言って、俺に椅子に座るように促して受付の方に歩いていった。俺は秋の言葉の通りに、小洒落た革の椅子に座る。思ったよりも柔らかくて座りやすかった。座ると、全身の疲れがじわりと滲み出てくる。

 綺麗な天井を見上げながら、俺は夢なんじゃないか、なんて考えた。でもそれはこの全身の疲れが夢では無いことを証明しているし、走った時のあの爽快感は夢では味わえないものだろうから、僕のしょうもない考えは身をもって否定された。

「朔」

 つんつんと肩をつつかれる。秋が俺のことを覗き込むようにして見てくる。

「行こ」

「あ、ありがとう」

 俺は足に力を入れて立ち上がる。疲れ切った足が小さく悲鳴を上げたが無視をした。

 エレベーターホールで立ち止まる。秋が上の階のボタンを押した。

 俺は疲れでぼんやりとした頭で聞く。

「俺の部屋の鍵は?」

 俺が聞くと、秋は「ほい」と言って鍵を見せてきた。部屋番号が書かれているキーホルダーには九〇三、と綺麗な明朝体で描かれていた

 俺は違和感を感じた。なにかおかしい。もう一度じっと秋を見て、嫌な予感がした。もう疲れが吹っ飛ぶくらい。

「お前の部屋の鍵は?」

 秋は「あはは……」なんて乾いた笑みを浮かべながら、もう一度さっきと同じ鍵を揚げる、

「これには深い理由があるんだけど……聞いてくれますかね?」

 俺はうなずく。秋は視線を外しながら、しどろもどろに話し始めた。

「今の時期さ、結構予約埋まってたのよね。でも、シングル二部屋取ろうとしたんだよ? 初めは。でもね、どこ見てもどこ見てもほとんど埋まってるの。それで、最終手段、ツインを予約したっていう……良いよね?」

 秋は気まずそうに言った。もう、今更だ。まあ、これも秋なりに考えた結果だから仕方ない。

「……しょうがない」

 俺がそう言うと、秋は顔をぱあっと輝かせて「ありがとー」と嬉しそうに、心の底から安堵したように言った。俺が心のなかでため息をしたところでエレベーターがやってきた。エレベーターに入るとやはり中はお洒落で、天井には夜の星屑を模したような柄が入れてあった。秋はそれをキラキラとした目で見ていた。リンッと小さな鈴のような音がなり、扉が開いた。どうやら九階に着いたらしい。

 エレベーターから出るとまず目に入ったのは水墨画だった。全体的には洋風だと思っていたのだが、なぜか置いてあった。しかもそれが全く違和感を感じさせない。作った人の名前も作品名も知らなかったが不思議と、見入ってしまった。秋から小さく「ふふっ」と、笑われたがそんなこともお構いなしに。

「いつまで見てるのかなー」

 そう、秋から催促されることでやっと俺は現実に戻ってこれた。

「あ、うん。ごめん」

 いつもよりたどたどしい反応になったからか、秋がくすくすと笑う。俺たちの使う部屋はエレベーターホールからほど近い場所にあった。

 部屋に入るとまず目に入ったのは窓から見える月だ。一瞬、入ったのが部屋ではなく、もっと別の夜の空間に入ってしまったかのように感じてしまうほどに、圧巻だった。秋が部屋の電気をつける。するとやっと部屋の全貌が見えてきた。部屋は和洋室と呼ばれるもので、入口付近にはトイレや洗面台、お風呂などが設置されている。靴を脱ぐ場所を通り過ぎると、ベッドが2個置かれていて、奥側には畳が敷かれておりくつろげるように数枚の座布団と四人は使えるくらいの大きさの机が置かれていた。秋がベッドのすぐそばに荷物を置くと、すぐさま畳の方に寝転がった。

「至福の時」

 俺もベッドのそばに荷物を置いて、秋と同じように寝転がる。畳の微香が優しく鼻を通り過ぎる。

「あー日本で生まれて良かった」

 俺が呟くと秋も隣で「わっかる」と楽しそうに言った。壁にかけられている時計はもうそろそろ7時を指そうとしている。

「これから、どうする?」

 少し早いが夕飯も食べてしまったし、露天風呂に入りに行くにしても、今の時間は混んでいる可能性が高いだろう。秋が唸る。

「露天風呂行くにしても人多そうだしな……いっそ、部屋の風呂入る?」

「あーありだな」

 俺が賛同すると、秋は「んじゃ、入れてくるー」と言って、立ち上がる。

 数分経って秋が戻り、また寝転がる。

「めっちゃお風呂広かったんだけど」

「おー」

 それは疲れが取れそうだ。小さく聞こえる湯の音をBGMにしながら、うつらうつらと船を漕ぐ。全身を包む、優しいイグサの匂いに誘われるようにしていつの間にか眠りに落ちていった。

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