2回戦開始前

第220話 隙間の時間

 「けっこう、じかんあくんだね」

 修羅阿修羅は、刑務所で特別に設けられた控室で父天外と待機をしていた。


 天外は1回戦の自身のダメージを確認していた、幾つかいい打撃をもらっている、次の試合に影響はないとは考えていた。


 「1日に2試合か慣れてない選手には結構きついかも知れんな」

 「お父様は、やったことあるの」

 「まぁな、正式な試合ではないが、若い頃にやった事あるから問題ない」



 不意に阿修羅のスマホが鳴り、阿修羅はスマホを取る、電話の相手は母親の優美であった。


 「あー、ママ、うん、だいじょうぶみたい、つぎのしあいもがんばるって」


 部屋全体に緊張感が少し解けるのを感じる。


 「そういえば、お前の友人の天空は残念だったな、実力的に劣ってなかったんだがな」


 「うん、ても、ケガはたいしたことないみたいだから、よかったかな」



 ドアをノックする音が聞こえた、ドアは内側から鍵がかかっている為、阿修羅と天外は用心し、ドアを見る。


 「なんの用かは、わからないが、そこから話せ」


 ドアの向こう側から声が聞こえる

 「すみません、運営から緊急で連絡がありまして、直接お話したい事が」


 天外は、立ち上がりドア越しに忠告する。

 「今鍵を外すが、10秒待ってからドアを開けろ、いきなり開けたら問答無用に目を潰すぞ」


 そう言って鍵を解除し、扉から離れた。


 少し時を待ち、扉が開く、制服に身を包んだ刑務官が入ってくる。


 「すみません、忙しい所」


 刑務官の一人は、会話を始めようとした瞬間、天外は即座に気づいた。


 その刑務官は、九条のセコンドの扇である事に。



 「アイツはミスをした、面倒だが俺自身、お前達修羅に力を見せる必要がある」


 腕を短く動かすと隠していた武器が、上着の手首から小刀が現れ、扇は両手に小刀を握りしめる。


 「関係者が試合外に妨害工作を行えば失格、だが敗退したなら問題なく攻撃できるといった訳か」


 「この会場は刑務所、警備は厳重だが入り込みさえすれば、一番脆い」


 「つまり、お前を叩きのめせばもう打ち止めって事だよな」



 天外は、構えを取る、それをセコンドの阿修羅は、割ってはいる。


 「セコンドは、せんしゅのボディガードのやくわりもつとめている、わたしたち修羅に力をみせたいんだよね」


 「なら、わたしと戦ってももんだいないよね」


 包帯を巻いた右腕を後にし、左手を前にし構えを取った。


 

 

 


 

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