第203話 戦いの選択肢
牛山は、医療救急室に移動する事なく、リングドクターを呼び寄せ、リング内で山本の応急処置に当たらせていた。
「まだやれましたよ」
山本は不満を口にする、裏の戦いにタオル投入によるリタイヤなどぬるい決着はない、まだ戦える状態での終わりは納得がいかなかった。
「だろうな」
牛山もその気持ちは理解し言葉を返す。
「だがな、状況は変化しつつある、お前がこのまま戦って勝ったとしても、負傷箇所は今よりも増える訳だ、下手したら両手使えない状態でリングを降りる可能性だってある」
「そんな事は、日常だ」
「状況は変わりつつあると言っている、さっきの試合の後、秘密裏に動いていた輩がいる、同じ『子供たち』だが、何を考えてるかわからない」
「どういう事だ」
「『彼奴等』は、選手を自分達の駒にするかあるいは、始末するつもりだろう」
「そんな事許されるのか、俺達選手の生命は全て『あの御方』の者だ」
「『父』は危篤で、今、後釜争に動いている子がいるという事だ、お前自身身の振り方を考える必要がある」
「その為に、俺に必要以上負傷させる訳にはいないという事か、でもいいのか、万が一でも寝返り可能性のある者を助けて」
「戦いの中の生死なら仕方ないが、戦いの外なら自分の生き死にくらい、選ばせないとな、それにお前が裏切っても俺には勝てんよ」
山本は理解した、だから衆人環視の中で治療をさせているのかと、戦って死ぬなら問題ないが確かに、お家騒動のゴタゴタで自分の選択肢なく死ぬのは、納得出来ないな、そう思い拳を握りしめる。
上総介は、一礼しリングを降りる。
甘い男だが、真っ直ぐな男だったと、山本は出来ればこのトーナメントを勝ち残って欲しいと思い、山本も手当てをされた手を確認し、リングを降りる、そして、1回戦最後の試合が始まる。
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