第201話 籠城
山本は、小刻みにフットワークをとり、右手を前に添えて構える。
痛めてない右ジャブを中心に攻撃のコンビネーションを組み立てを行う。
顔を狙う右ジャブから、右ボディを狙うフック、返しの左ストレートは掌底で行い、ダメージよりも反撃を止める為に手を出す。
打ったタイミングで直ぐに動き、動きが捉えられないように戦いを組み立てる。
上総介は、全てを受ける事が出来ず、最後の左掌底はボディに当たる。
先程とは違い、攻撃を散らし、戦う、長期戦ならば問題ないが、山本にも予定外の事はある。
左を活かせない攻撃は、決定打に欠ける。
蹴りも、組み付きも手の内を見せたくない山本は、パンチ主体の攻撃が今できる戦法でかったが、守りを固めた上総介には効果的でなかった。
(手を出せないのか、出さないのか、このままパンチ主体で戦えば左手の損傷が大きくなる)
山本の心配は最もである。
そして、今現時点で問題はもう一つあった、山本は上総介の攻撃で拳を壊された事もあり、相手の動きに無意識で、反応してしまう事、このままでは、勝機は見出せない、そう思い山本は間を取り、ガードの姿勢をとった。
決定打が欠け、手を止め休む事を選択したかにも見えるその動きに、反撃のチャンスだと、観客は考えた。
しかし、これは山本の仕掛ける罠。
(守ってばかりでは勝てないぞ、突きでも蹴りでも打ってこい、お前の攻撃を受け、そのままお前の骨を折ってやる)
上総介は山本は反対に防御に使っていた腕を下ろし、攻撃の構えをとる。
左手を前、右手を腰の部分にそえる。
右の正拳突き。
(覇道の突き、受けてもらう)
ジリジリと、間を詰め突きの間合いに入る。
勝った者が次の相手になる選手の1人、一之瀬は大きく欠伸をし、北岡兵衛は次の攻防が勝負を決すると思い注意深く観察する。
立ち技、打撃中心の北岡は相手に動きを知られている選手の1人、できる限り他の選手の技は知る必要があった。
「2回戦の相手は、どちらになってもなるべく手は知りたいね」
北岡のセコンドは、師匠でもあるサモ・ハン既に現役は引退し、普段は奥さんと子供を持ち、で料理店を切り盛りしてる。
「でも、まずは初戦の相手、一之瀬さんの事は、先生から聞いています、『圧倒的な打たれ強さと腕力』そして、『相手の技を使うコピー能力』、やっかいな相手ですね」
「私は、あの打たれ強さと腕力でやられちゃったけど、北ならマイペンライ(大丈夫)、一之瀬君にリベンジも考えて色々調べて、弱点もわかってるから、初戦の相手が一之瀬君でよかったよ」
サモ・ハンは、心強く微笑む。
北岡は、先生や自分の周りの人の恩返しの為にも、勝利を自分自身に約束した。
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