第196話 流れ
巌流島に立てられた、特製リング、他のブロックとは違いは、金網で仕切られていない事と、屋外である事であった。
天気は晴れであり、太陽の陽射しのせいで、試合の環境としてはあまり良くはないが、闘い、戦場にそれは関係のない話であり、太陽の日を背負った山本は、少し有利であり、すり足の様な独特なフットワークで上総介との距離を詰めていく。
上総介もまたアップサイドに構え、山本を迎え打つ体勢を取る。
ベアナックル、聞き慣れない格闘技であったが、上総介の認識は、素手でのボクシング。
山本の初手は、上総介の顔面を狙う左ジャブ。
重さはない、素早い打撃。
上総介は、右手でその左ジャブを捌く、体重が乗っていないので、ジャブは直ぐに戻し、また再度左のジャブを行う。
今度は、上総介は半歩下がり回避。
上総介からは、反撃はない、ただじっと相手の動きを注視する。
空手に先手なし。
先に手を出さない意味合いで、広まっているが、この言葉にはもう一つの意味がある。
空手には最初の一撃で終わりにする、二撃目はない、それが、この言葉のもう一つの意味。
上総介は、自分の打撃に確固たる自信をもっている、一撃で相手を倒せる打撃、一撃必殺を信条にしていた。
安易な攻撃はしない。
様子を伺う、上総介に山本は再度仕掛ける。
スイッチ。
左右の構えを変え、右のジャブを数発叩き込む、上総介は捌きよりも防御を選択、腕の上から拳の衝撃が伝わる。
力を込めていないが、素手での打撃は威力が高く、それを何度も繰り出す。
目が慣れてきたタイミングで、再度スイッチ、左ジャブに変えてガードの上からでも構わず固める。
試合が始まったばかり、まだどちらに決定的な動きはないが、風向きはやや山本に吹いていた。
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