第192話 阿修羅と天外

 比嘉秦王のリングでの発表は、多くの選手関係者に強い刺激となって伝わった。


 鏡花帝釈は、刑務所内だから参加できるのだ、もし次勝ち抜ければ、飛行機に乗せ沖縄まで連れていないのかと署長は頭を抱えた。


 まだ、一回戦終わっていない選手としては、より万全な状態で勝ち進む必要を感じていたし、終わってダメージがある選手にとっては寝耳に水である。



「沖縄で、あさってか」


 セコンドの阿修羅は、父の天外の方を見て秦王の発表の反応を見た、思った以上に早い大会日程、父はどう思ったかが気になった。


 「思ったよりは早いが、問題ないだろう」

 天外は、弁当を食べながら興味なく答える。


 本番は、次戦の鏡花戦、その後の事はおまけ程度の認識であった、ただ北海道から沖縄の移動には少し手間だなとも思った。


 「お父様は、鏡花に対してたいさくか何かありますか」


 「問題ない、ヤツの強さは相手を殺しも気にしない倫理観にある、そのリミッターがないだけの相手、格闘家としては、対した事ないさ」


 阿修羅は、天上を見上げる、父がそういうならと思い、そして、瞼を閉じる。

 

 耳から、秦王の選手の呼び込みコールが聞こえる、第7試合が始まる事を阿修羅は知る。


 

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