第191話 石森とレオと。

 「沖縄かぁー」


 控室でリング中継を観ていた石森の彼女安里涼香は、行ったことのない南の島沖縄を想像していた。

 隣には、まるでボディガードの様に武田は、見守っていた。


 石森は日程を聞き強い表情を見せる。


 「沖縄で決勝っていいじゃないか」

 扉の側で櫂は、上半身裸で壁に持たれている。


 「どこに行ってたんだ、櫂、上半身裸で」


 「ちょっとな、まぁ、気にするな」


 武田は話を割ってはいる。

 「せっかくだ、ここで観戦してもいいか」


 櫂は石森に確認し、石森は問題ないと答える。

 

 (若、宜しくお願いします)

 武田は、声に出さずに、次の戦いに期待を込める。



 同時刻、別控室、ライジング・レオ。

 

 「だから、俺の案に乗っかかるべきだよ」

 先程合流した、レオと同業者であるデビル渡辺は、レオを説得する。


 「くだらない」


 メリッサは、吐き捨てるように拒否する。


 レオもその策にはだんまりだった。


 「じゃあ、あの石森って奴に勝てるのか、一回戦を観た感じ、まだ余力も対組み技も見せてない、お前に勝ち目はないと思うが」


 「はっきり言うんだな」


 レオは苦笑する。


 「ああ、俺達プロレスラーは格闘家でもなければ武術家でもない、アスリートでエンターテイナーだ、メダリストを寄せ付けない世界チャンピオンに勝てる訳がない」


 「だから、アンタが、乱入して試合を壊して、反則負けにするって訳、バカじゃないの、そんな事したら、私達がしてる事が全部パァーだし、プロレスラーはやっぱり『やらせ』だなんだって言われるんだよ」


 「だが、何も出来ないで負けるよりは、プロレスファンとしては、納得できるんじゃないか」


 渡辺は必死で説得するが、レオとメリッサは聞く耳を持たない。

 

 「一回戦を勝てたのは運が良かっただけだ」


 渡辺は、納得しない。


 レオは、立ち上がり渡辺の前で腕を組む。


 「無様には負けない、心配するな、デビルお前らしくもない」

 

 デビル渡辺は、頭をかいて納得するしかなかった。

 

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