第187話 他の子達
刃は、間を詰める為に、一気に駆ける。
視線はモードの腕の動きに注目している、暗器を使っていた以上、他の武器の可能性も考えている。
しかし、毒はないと判断、毒を持っているなら、初めから使っているはずだからだ。
モードは、笑みを浮かべ重心をさげる。
レスリングの様な体勢をとり、向かってくる、刃の右脚に向かい、タックルを行う、服の上からわからないがモードの肉体は格闘家のそれであった。
モードは、目の前の刃等気にもしていない、目標は別の所にある。
数時間前 プライベートジェット機内
広い機体内で3名の男女が座っている。
全てチーホイの子供。
その1人は、モードだ。
「モードとは、よくわからない偽名だな」
新しいモードの偽名に顔中に傷を持つ40代の男は、鼻で笑う。
身長は200を超え、体重130のこの男、この男を見た者は、男という生物の一つの到達点とも感じる事も難しくないだろう。
「そう言うな、お前も今は『ヘラクレス』って名乗ってるだろ」
ヘラクレスは、豪快に笑う、特徴のスーツがはち切れんばかりだ。
「ハハハ、親父の意向だからな、センスのない偽名は、そろそろ終わり、少し寂しくはなるがな」
そんな、ヘラクレスを冷ややかな目で見て、ワインの銘柄を確認してから、グラスに注ぐ。
中年の女性、彼女もチーホイの子の1人であり、子達の中でも最年長であった。
「よく言うわね、私達の父が危篤となったのを知って直ぐに連絡して集まれだなんて、リーダーのつもり」
中年の女性は、呆れたようにグラスのワインに口をつける。
ヘラクレスは、意に解さない様子で、ワインを手に取り直接口に運ぶ。
「そう言うな、13名も跡継ぎ候補がいるんだ、誰かが指揮を取らんと割れるだろ」
モードは、腕を組み同調する。
「確かにな」
ヘラクレスは、笑いながらモードに伝える。
「お前は器じゃないがな」
「馬鹿にしているのか」
「嫌、適材適所だ、お前はどちらかというと裏方の方が活きる、お前もそう思ってるはずだ、13名とさっき言ったが、俺の感覚だと実際は俺を含めて4名くらいだと思っている」
言いながらモードを見る、ヘラクレスは、モードに念を押すように言い切る。
「それ以外の奴らは、身の振り方を考えなければいけない」
女性は、眉を上げる。
「偉そうね、でその4人に私は入ってるの」
ヘラクレスは、手に取ったワインを女性の前に置に付け加える。
「勿論だ、『マダム』一番候補に近いのがアンタだ、だから、俺はアンタと行動している、俺かアンタが次代のチーホイになればより組織が大きくなる、アジアだけではない欧米諸国にも顔がきくようになるぞ」
口をつけたワインに興味はない、別のワインを物色する。
「話がわかるじゃない、でも、今勝手に動けばまずいんじゃない」
「大丈夫、今、組織はバタバタしている、俺達は基本的に任務外ならフリーだ」
話の本質に向かわない事、そして今何処に向かっているかもわからないモードは、ヘラクレスに問う。
「で、どこに向かってるんだ」
ヘラクレスは、その巨体から大声で答える。
「日本だ、あそこに、俺達、兄弟のドーピングドクターがいる、あいつをこちら側に引き込みたい、確か『バベル』とかいうトーナメントにセコンドで出てるんだろ」
「一旦、拉致するぞ」
ヘラクレスは、冷たい目でモードに指示をする。
数時間後、そのモードは、刃と向かいあっている。
(つまらない所で足止めを喰らうわけにはいかない、とっととコイツラを制圧し、ドクター確か今は七八を名乗っていたか、それと鞍馬とかいう選手もついでに連れて行く)
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