第185話 それぞれの戦士
─福岡アリーナ地下駐車場 緊急用出入り口─
医療関係者に偽装した男達が、地面に倒れ込んでいる。
上下白のジャージの大城刃、沖縄空手を幼少の頃から習い、バベルトーナメントの開催者の比嘉秦王の弟分でもある彼が、行った事だ。
バベルトーナメントの開催には幾つかの問題があったが、それを比嘉が一人で行うには時間とお金がかかり過ぎる事から、彼はチーホイという裏社会の人間の力を借りた。
その甲斐もあり、一年という期間を経て、開催に漕ぎ着けるが、その期間でチーホイの考えは変わっていった。
それは、自身の病という部分、自らが仕切る裏格闘コロッセオの価値を考えさせる事件の為であった。
チーホイの動向が読めない比嘉は、初期はトーナメント参加候補であった、天上院我狼を大会の警備主任とし、また、その下に何名かの強力な武道家を大会の警備とした。
その1人が大城刃。
そして、その刃の横に立つ柊木櫂、バベルトーナメント参加者、石森陽のセコンドであり、国内キックボクシングの軽量級チャンピオンである。
柊木櫂もバベルトーナメントに声をかけられたが拒否、自身の親友である陽の優勝の為に裏方に回る事を決意。
櫂は、天上院家の隠し子の一人であるが、幼少の頃母を捨てた事を許せなく、その高い能力から跡継ぎ候補として、接触されるが天上院家を継ぐことは彼の美学に反した。
義兄、広夢と義姉、麗奈との関係は良好だが、天上院家は、利用こそすれ利用されるつもりは無かったが、借りは作りたくない、それが、今回は要望を聞く意味の一つであった。
そして、もう一つは、バベルトーナメントの戦いを見て血が滾った事も否定出来なかった。
ホースは何も言わずアップライト気味に構えている、目線は櫂に行っている、ホース自身、刃よりも櫂を脅威と判断した。
ホースもまた、元コロッセオの上位クラスの選手であった、テクニックはそこそこであったが、無双の打たれ強さで勝ちを重ねていたが、試合のつまらなさなが災いし、試合数が減りそこを、モードに買われたのだ。
試合でない方がホースがより生きるモードはそう考えたからだ。
表で戦う選手と、裏で戦う戦士は交差する事なく、バベルトーナメント続いていく。
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