第183話 ZARAのシャツ

 違和感は確かに感じていた。


 櫂は、大城刃の事を知っている比嘉の弟分でもあり、国外でも活躍をし、空手をベースとして、スポーツマンとしてではなく、実践により近い格闘家を、不意打ちもなく、ものの数分で倒せるはずなはないからだ。


 (こいつが、俺の予想を遥かに超える実力者、という線はないよな、)

 

 チーホイの子ども達も、チーホイの管理する裏格闘『コロッセオ』の事、そこで阿修羅が戦った事も姉から聞いていた。


 

 ホースは、無防備に距離を詰めてくる。


 櫂は身長が167cm、ホースは180cm、身体の太さも違う、ホースは一撃くらっても構わないといった様子であった。


 ホースの左右のジャブは、ガードせずに躱す。

 巨体に似合わない速いジャブ、しかも顔面ではなく、身体全体を狙っている。


 短期決戦の戦い方ではない、しかし、横たわる大城を考えるとブラフではない事も理解していた。


 大城の損傷箇所を確認するのが一番手っ取り早いが勿論そんな隙はない。


 少ない情報だが櫂の目は、鷹の目、答えを導くのは、造作なかった。


 

 (ナックル型のスタンガンか)


 グローブで上手く偽装しているが、櫂は誤魔化せはしなかった。


 (古流空手で対武器は想定していても、流石に近代武器は対応出来なかったか、しかし、それだけか)


 回避に集中し、攻撃を寄せ付けない、時間は一分を過ぎていた。


 必要な情報は、『見』でとれる分は取れた、櫂は、そう思い軽く右のローキックを繰り出す。


 単発のローは、軽くカットされ、返しに左ジャブで顔面を狙われるが、頭を少し後に下げ避ける。


 感覚的にそろそろ2分だな、そう思った瞬間。



 ホースの後方にいるモードが、手を待っすく伸ばしこちらを狙っている様子が見て取れた。

 

 瞬間に理解する、飛び道具、流石に重火器ではないだろう、暗器の類かと、



 避けるのは造作ない、しかし、体勢が崩れれば、ホースの攻撃を一度は受けないといけない、強い電気ではない、問題ないとは思うが、飛び道具の正体を確かめてからでは回避に万一間に合わない方が、リスクが高い。


 毒の可能性も頭に過るし、ZARAのシャツが汚れるのも無性に嫌だった。


 (めんどくさいな)


 櫂は、心の中で呟いてた。


 

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