第182話 戦い開始

 櫂は、少し足早に言われた場所に向かう。


 正直、天上院我狼から連絡が来た事はやはり、ただならない事が起きている、起き始めているそう直感していた。


 黒のシャツにハーフパンツ、動き易い格好で良かったなと思いつつ、目的地にたどり着き、外と中を繋ぐ関係者用の通路の扉を開ける。



 「これは、これは」


 櫂の足元には、医療関係と思われるように偽装した輩達が倒れており、また、視線を先に送る。



 一人の男がうつ伏せに倒れている。


 大城刃だ。


 (俺が連絡もらってから、まだ数分しかたっていないんだがな)


 ホースは、刃の側に立っており、その敵意は櫂に向けられる。

 モードは、参ったなといった感じで、頭を掻く。


 「次からつぎへときりが無いな、そこをどいてくれてたら」


 櫂は手を前に出し言葉を遮る。


 「時間があまりない、とっとと始めようか」


 櫂は、軽くフットワークを取る、あまり話したくといった感じだ。


 (あまり、裏のゴタゴタには関わりたくない)


 モードは、大城を制したようにまた、ホースに命令する。


 「『2分』で終わらせろ」


 ホースが頷くと、櫂は逆に挑発する。


 「そうだな、2分で終わる、嫌、2分以内かな」


 

 2人の距離はまだある。


 ホースは、体格も櫂よりは大きい、腕周りも太く、脚はトレーニングパンツで見えないが、櫂はその太さは認識出来ていた。


 ホースはグローブを付けているが、櫂は、素手の拳だ。

 

 (慌て過ぎたな、拳は固めてないが、掌底と蹴りで組み立てれば問題ないな)


 ホースも、フットワークを取る。


 打撃主体か、そう思い、櫂はホースの動きをしっかりと見極める。


 遠い間合いから、左ジャブ、威力よりもスピードを重視している。


 (意外に手堅いな)

 

 早いジャブも、櫂は難なく回避、そもそも距離もあったのだ、当たるわけはない。


 本命は、腹部への右フック。


 バックステップで回避、一発入れようかと思ったが、誘いの可能性もあり、そこは、『見』を選択。


 いくつかコンビネーションを叩き込んでもいいが気になる事もあったので、様子を伺う。


 「2分以内で終わらせるんじゃなかったのか」


 モードの外からの挑発に、櫂もまた挑発で返す。


 「安心しろ、本気でやれば3秒で終わる、そっちもこのペースじゃ明日までかかるぞ」



 櫂は、口元が緩む。


 バベルトーナメントで熱い戦いを観て、身体が熱くなってきていたのだ。


 (楽しませてくれよ、馬のイレズミさん)

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