第180話 来客
関係者用の通路のベンチに腰掛け、天上院我狼は、了解した旨を前田に伝え電話を切る。
始めは、大会に参加出来ない事で、憤りも感じていたが、今はこのバベルトーナメントを最後まで見たいという気持ちが強くなっていた。
自身の義足の左脚を触る、不慮の事故で失った左脚だ。
(この脚でも戦える、結構いい所まで行く自信はあるが、優勝は流石に厳しいだろう、老兵は去るべきかもな)
そう思い、一番手練れにメールで指示を出す。
(さてと、後は保険をかけようか)
天上院は、今度はメールではなく直接電話をかける、何コールかした後電話相手が出る。
電話の相手は石森陽のセコンド櫂であった。
「なんだよ、今忙しいんだけど」
「まさか、取るとはな、つまらん嘘をつくな、忙しいならお前は電話なんてとらんだろ」
櫂は舌打ちし、電話を続ける。
「まぁな、でも何のようだよ」
「単刀直入にいう、このバベルトーナメントを妨害しようとする輩がいるらしくてな、力を貸してほしい」
「嫌だ」
「何故だ」
「俺は、明のセコンド件ボディガードだ、試合以外のつまらんチャチャには興味はないよ」
「狙われているのは、鞍馬のセコンドの七ハと鞍馬本人になるらしい」
櫂は少し表情が変わる。
「俺には関係ないだろ」
「そうか、試合前ならいざ知らず、あの試合を見たらまったく興味が無いわけはないだろ、それに、鞍馬には娘もいる」
櫂は、溜息をつく、確かに薬で戦うような輩は嫌うが、最終的に立場を考えずに、選手の命、娘の気持ちを汲んだ者を見捨てる事は、櫂自身も嫌だった。
「だとしてもだ、そんな状況で俺自身勝手に動く訳にはいかない、俺は明」
「大丈夫、それには手を打ってあるから」
そのタイミングで、部屋のノックがし、扉が開く。
櫂は、電話しながら、応戦できるように意識を向けたが、それは杞憂に終わる。
「やっほー」
訪ねて来たのは、石森の彼女、安里涼香と覇道流空手の武田であった。
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