第173話 戦いの天秤
ロープに振られた工藤を、そのまま鞍馬は追いかける。
目の焦点はあっていない、ただ本能でのみ、工藤は距離を詰めてから、左右のフックでたたみかけを行う。
工藤はガードを上げて耐える。
観戦している阿修羅は父に確認のように問いかける。
「くどうさん、けっこういいのをもらっているけど、たえられるのって、てんせいのぶぶんもあるよね」
「ああ、体質的に身体が硬いものより、柔らかい者の方がダメージの分散が上手い、技術的な事もあるが、それ以上にそこが強いだろう」
そして付け加える。
「しかし、ダメージが無いわけじゃない打たれ続けるのは不味いな」
工藤はガードで耐えながら、攻撃のパターンを身体に覚えさせる。
(早くて重いがワンパターン過ぎたな)
工藤は、右手首を掴み、体を引き寄せ鞍馬の腕を回転させてから固定する。
脇固め
完璧な入りと形に、金メダリスト矢野も思わず、称賛の表情を見せた。
完全に関節を固定し締め上げる、体格差も関係ない、体重を乗せ動きを止めた。
「勝負ありだ」
工藤は、そう叫び、リング外のレフリー、そして、続いて鞍馬のセコンドに視線を送る。
ここからの反撃は不可能と判断し、普通ならタップアウト、或いは棄権、ドクターストップだ。
普通なら、しかし、これはルール無用のバベルトーナメント、その思考は危険だった。
視線を送りながらも、力は緩めない、油断もしているつもりもなかった。
始めに異変に気づいたのは、工藤のセコンドの梓であった。
「ジュンジュン、危ない」
鞍馬は、固められた腕を無理に動かす、その為、腕の関節に負荷がかかり、骨が外れる。
折れた瞬間、工藤は手を離す。
しかし、既に鞍馬は痛みを物ともせずに、攻撃の体勢を取っていた。
剛腕が工藤の顔に迫る。
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