第169話 赤井梓

 ─大会参加者決定前─


 工藤は、比嘉に呼ばれ、梓と共にホテルの応接間で比嘉を待っている。


 広い部屋には豪華な装飾品が並び、ソファの柔らかさに工藤と梓は驚いた。

  

 「これめちゃくちゃ高かそうだね」


 「ああ、比嘉秦王、只者じゃないだろうな」


 工藤は、第一回の選手発表の後、YouTubeで、自分達を指名してもらいたい、実績はないもチャンスをほしい事、合気道の可能性を信じてくれと、世論を後押しした。


 扉が開き、スーツ姿の比嘉秦王がはいって来た。


 その表情は少し不機嫌そうであった。


 「貴様が、工藤純、合気道ユーチューバーか」


 金髪に体格も良くはない、強さを感じなかったが、何か工藤の奥に光る者を感じた。


 (違和感、何かあるのかこの男)


 「はい、是非貴方か開催するバベルトーナメントに参加させてもらいたくて」


 「実績もなければ、推薦人もいない、お前を何故参加させる理由があるんだ」


 「それは、これが理由です」



 工藤は、一冊の古書をテーブルに置いた、比嘉はその古書を手に取り、その表紙に書かれた文字に驚きの表情を見せた。


 「これは、赤井流合気術の書、何故お前が」


 梓は、その問に答える。

 「それは、私の祖父の本です」


 「お前の祖父、お前名は」


 「赤井梓です」


 比嘉は噂で聞いた事があった、赤井流合気術の事、しかし、それは都市伝説としか思えない話であった。


 護身ではなく、相手を砕く合気。


 赤井宗一とその双子の弟宗二が、合気道から発展させた合気道。


 「たしか、創始者の一人、宗二には子供が居たと聞く、しかし、その息子は合気を継がず赤井流は途絶えたと聞いていたが、まさか、孫娘が継いでいたとはなあ」



 「嫌、受け継いだのは、そこの男、工藤純か」


 比嘉は、ほくそ笑む。


 破壊の合気と言われた赤井流、修羅と戦い途絶えたとされた幻の合気が目の前にある。


 工藤の奥に感じた物はそれかと、比嘉は頬を緩める。


 「そうだな、確かにチャンスはあげても問題はなさそうだな」


 

 


 

 


 

 

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