第164話 歩み

 控室にて、工藤純は少し緊張した趣きで道着を着直し、オープンフィンガーグローブを着用する。


 

 工藤自身、他の選手と比べて、見劣りしてしまう部分がある事は勿論理解している。


 YouTubeを使い、なんとか、比嘉との面談の機会をもった時に、比嘉の鶴の一声で参戦が決まった経緯がある。


 理由は、比嘉から語られる事はなかった。



 セコンド赤井梓は、心配をしていたが、それは、表に出さずに工藤に活をいれる。


 「大丈夫、もしやばくなったら私が直ぐにタオル投げちゃうから」


 「それは、ちょっと問題だろ、タオルを投げるのは俺が戦えなくなってからにしてくれよ」


 工藤は固い笑顔を見せる。

 ここまで来たら、やるしか無い、自分が、嫌、2人で選んだ道だから。


 そう思い、工藤純と赤井梓控室から出てリングに向い歩を進める。



 長い通路を出て、入場口へとたどり着き、先入場の鞍馬を待つ。


 「鞍馬選手の事あまり調べられなかったね、レスリングって話しだけど、試合した経緯もないし、『裏』の選手なのかな」


 「大丈夫だよ、合気道は、如何なる時にも対応する事、相手が何者であって問題ない、はずだよ」


 「なんで、言い切らないのよ、逆に心配なるじゃない」


 「だね」


 そんな2人に運営が話をかける。


 「準備できましたでしょうか、入場お願いします」


 2人は頷き、お互いに笑顔を向ける


 「よし、じゃあ、行ってくるか」

 

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