1回戦 第6試合
第161話 謎の男 七八
「そろそろ時間だね」
鞍馬の控室に1人の男が入ってくる、彫りの深い顔に、長く伸びた髪とヒゲの男、彼は七八(しちは)と鞍馬に名乗っていた。
鞍馬は、膝に乗せたあんりを膝から降ろして立ち上がる。
「七八さん、どこ行ってたんですか、セコンドなのにフラフラされると困りますよ」
「そう言わないで、親子水入らずの時間邪魔しちゃ悪いからね」
七八は、そう言って手に持った鞄を下ろし、鞄を開ける、中にはいくつかの医療道具が入っている。
「そろそろ、準備しよう、娘さんは外で待っててもらってもいいかな」
「あんり、すこし、外で待ってなさい」
鞍馬の脚に隠れていた、あんりは、七八に目も合わせずに扉から外に出る。
「すみません、人見知りで」
「構わないよ、それよりも早く準備しないと」
そう行って注射器を準備し、鞍馬を座らせた。
「この薬なら、疲れも痛みも感じないで、20分程全力で動けるよ、ただ殴るときには気をつけて、自分の力で骨を折るかもしれないから」
その言葉と共に薬を身体に流し込む。
「これで、貴方は、人間を超えた超人、勝てる人はいないよ、でも、」
「相手も超人ならこの薬も必要だね」
そう言ってカプセルを取り出す。
「この薬は、試合に痛みとかで動けなくなった時とか、勝負を賭けたい時にこっそり飲んで、グローブの中に仕込んだらバレないよ」
そう言って薬を手渡す。
「セコンドにもついてもらい、何から何まですまないな」
鞍馬は、薬をじっと見つめる。
普通にやれば勝てない、薬でもこの素性のよく解らない男でも利用しなければならない。
あんりの為だ。
鞍馬は、そう思い、グローブの中にカプセルを忍ばせ、あんりとの日々を思い出す。
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