第147話 ダウンカウント
「とっさに、頭をずらしてしょうげきをにがしてますよね、お父様」
Aブロック参加者の天外のセコンド、阿修羅は父にそう確認した。
「そうだ、只の回避じゃなく相手に打撃を与えたインパクトの次の瞬間に脱力し、上手くダメージを消している、本能的に行なったんだろうな」
リングサイドの櫂も、相打ちではなく、一方的に石森も打撃のみ当てた事を理解していた。
しかし、もう少しでもタイミングが早ければ、相打ちになっていた事を考えると岩田はこの展開も読んでいたのかと驚いた。
岩田は、石森に勝利する少ない勝ち筋を自身で逃していた。
一つは、入場前に、石森を前に闘志をあげ、試合までに積み上げてきた『格下と戦う』といった雰囲気を消してしまった事。
二つめは、何もないボディを食らってしまい、防御センスの高さではなく、対石森に特化している事を露見してしまった事。
その為、当初の予定して、30を超えるシュミレーションと唯一の勝ち筋を無駄にしてしまった。
岩田の考えではこうだった。
初めのラッシュで、ダメージを与えられるならそれでも良いが、難しい事は知っていた。
櫂の性格も調べている『第三試合の内容』を考えての短期決戦を指示するだろうなら、一度攻めた方が石森も攻めの姿勢を引き出しやすい。
石森のコンビネーションは、目に焼き付く程の見ており、また、ジム仲間にも実践してもらっている、多少被弾しても、コンビネーションをいくつか引き出させる。
防御センスの高い相手にどれくらい、どのコンビネーションがどう利用できるかを石森と櫂のコンビなら実践するだろうと。
そして、いくつかのコンビネーションの後に、シンプルなハンドスピードの攻撃に切り替える事も予想(対石森が露見)、そのタイミングなら、スタミナと岩田自身も打ち筋、癖への要撃のタイミングを早い段階で理解。
そこまで、段階を踏めば、相打ちに持っていけると考えていたが、実践はそうではなかった。
櫂がその工程を吹っ飛ばして、対石森特化を見破ってしまったのだから。
(性格は読んでいたが、セコンドとしての能力の高さは読めなかった、それが俺の敗因か)
岩田は、ぼんやりする頭でその反省する、今追撃されたら終わる。
その事は、はっきりしない頭でもわかっていたからだ。
しかし、石森は攻めない、代わりに口を開きダウンカウントを取る。
「ワン・ツー・スリー」
ゆっくりだが、確実に時は過ぎる、岩田は、そのカウントに自分の膝に力を込める。
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