第146話 渾身の反撃

 石森の本気のラッシュのスピードは、見ている者達を驚かせる。

 見ている者も目で捉えるのが困難とするスピード、実際戦っている相手はほぼ理解する事も難しかった。


 (只のジャブでも、身体の芯にくる、受け過ぎると不味いのはわかるが、まだだ)


 ギアが上がるように、ドンドンと威力とスピードが上がる。

 軽量級の強みでもあるスピード、大会屈指のそのラッシュに岩田は手も足も出ない様子であった。


 (無駄だ、俺の知る限りアイツのトップスピードに対応できる打撃選手はいない)


 櫂読み通り岩田の体力は削られていく、掴み専門の選手ならダメージ覚悟で掴みに行く選択肢もあるが、岩田にはそれすら無かった。


 ジャブ、ストレート、フック。


 頭部に意識をさせたら、腹部にと打ち分けをする事でガードをより固めさせるが、よもやガードの上からでもダメージが通るようになっていく。


 石森は、トップスピードでも2分程度なら、質を落とさずにたたみかける事が出来る、勝負ありと誰もが思った瞬間。



 石森の最速の右ストレートに、岩田は相打ちで右ストレートを打ち出す。


 両者の顔面にストレートが通る。


 岩田は、片膝をつき、石森は後方に吹き飛ばされる。


 「アキラ」


 涼香は、思わず叫び席を立つ。




 「面白いじゃないか」

 比嘉は、意外とも言える岩田の善戦に口元を緩める。

 相手が自分の倍、嫌3倍のスピードだとしても、相手の打ち筋、癖、性格を読み取れば、理論的に要撃は可能、といえそれを実践するのは、胆力と覚悟が必要とする。

 比嘉は、その事を理解し、その上でまた、思う。


 (それだけに、残念だったな岩田)



 相打ちなら、重量級の岩田が有利、それは誰もが思った、石森は立てないのではないかと、しかし、その予想とは裏腹に先に動いたのは、石森であった。


 「俺のトップスピードに合せるのは、岩田さんあんたが、2人目だ、正直驚いたよ」


 立ち上がった石森に涼香は安堵の表情を見せる。


 

 岩田は、まだ片膝をついて動く事は出来ない。


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