第145話 防御センス
一転して守りを固める岩田に対して、様子をみる石森、虚を突かれただけ、やはり、岩田はアウトで戦うつもりと判断、顔を狙い左ジャブ、岩田はブロック、2度目の左ジャブはあえてブロックの上だが、2発目は体重を乗せて動きを止める。
岩田は両手でガードしている為に、ボディがガラ空きになってしまう。
一瞬の隙だが、それを見逃す石森では勿論ない。
右でアッパー気味にボディを狙う。
定石とも取れる連携だが、石森の狙いは違う、両手でガードしている僅かな隙間を狙い、顎を捉える為のアッパー、それで、一気に勝負を決める。
つもりだったが、岩田はそれをすんででガード。
そして、岩田は直ぐに右のジャブを行うがそれは、石森に届かない。
(あの連携を初見で避けれるか)
石森は回避しながら、岩田は防御センスに驚く。
「ボディに左のストレートだ」
櫂は、体勢が万全ではない、石森に大声で指示する、その声かけに内心無茶言ってと思いも、ボディにストレートを行いそれは、打ち損じであるがボディを捉える。
岩田は、打ち下ろしの右で返すが僅かな差で空を切る、もし、もう少し返しが早ければ石森の顔面を捉えられていた。
(最後のストレートは余計だったか)
石森はそう思ったが、そうではなかった、それはある事を証明する大事な1ピースとなる。
一連の攻防に歓声があがり、解説は双方のテクニックを称賛した。
涼香は、呼吸を忘れていたのか、大きく息を吐いて肩をすくめた。
「相手の人、やっぱり強いですね」
武田は、一連の攻防で岩田をある程度理解した。
「攻防だけみると、そうですが、あの強さには秘密がありますよ」
「秘密」
涼香は、疑問の顔を浮かべる。
「秘密の鍵は、あの異様な防御テクニックです、普通ならあのアッパーを完璧に受けるのは不可能です、どうしたってボディに意識にいきますから、それをほぼ初見で確実にボディがこない事をわかっていた」
「予測できたから、受けれたって事」
「はい、恐らくは、岩田という選手、そうとう対戦相手の石森を研究してますよ、得意とするコンビネーションをあらかじめ予測出切れば回避できる」
「ただ、攻撃を当てるまでの、レベルには行ってないようには見えますが」
武田が感じていた事は、セコンドの櫂も感じていた。
(左2発からの右の顔面へのアッパー、アキラが体格差ある相手にやったコンビネーションだ、そんなに公の場では披露してなかったのに、対応したから高い防御センスを予測したが、ラッシュ後のバレバレの右ボディ食らったって事は、それは違う)
(対アキラに特化させたのか、俺が気づいたんだ、戦ってるアイツが気づかない訳はないよな)
櫂は、リングを叩き石森の意識を向けさせる。
「アキラ、コンビネーション、フェイントは入らない、手数で攻めろ」
石森は、いくつかのパターンで攻めるつもりであったが、櫂の言葉に頷き、間を詰める。
左ジャブ、右ストレート、返しの左、そして、フットワークを使い、また、左のジャブ。
単調ながら、石森のハンドスピードに岩田は防戦一方になる。
フットワーク、コンビネーションなら頭に入っている対応は出来るが、シンプルな攻めには今は手が出せない。
そう、今は。
岩田は、ガードの下に笑みを隠し、身体の痛みに耐える。
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