第144話 ファーストコンタクト

 先入場者の石森陽は、スポットライトを浴びながらリングに向かう。

 国内でここまで派手に入場したのは、初めてだ。


 柊木櫂は、口元が緩む。

 「実力的には俺達が後入場なんだけどな」


 「そう言うな」


 石森がリングインし、櫂は自分のコーナーで待機する、陽はリングの硬さを確かめる、あまり弾むようならフットワークがし辛くなり、ちょっとしたミスでも致命打になりかねない、石森はすこじつ集中を高めていた。


 

 その後に、岩田もリングに向かって真っ直ぐ歩き、後ろから少し場に圧倒されているセコンドの木梨もついてくる。


 石森は、岩田に視線を向け、その表情に少し自分の背中がピリつくのを感じた。


 インタビューを受けて、軽量級を下に見て、総合にボクシングは対応出来ないと言った男の表情ではなかった。


 「戦う男の顔だな」


 石森は、呟く、2回戦のライジング・レオにしか意識が無かった自分を恥じる。


 「先ずは、初戦から一つ一つだな」



 そう言って、ボクシンググローブを填めてもらい、櫂からマウスピースを受け取る。


 

 グローブの感触を確かめたと同時に戦いのゴングがなる。



 石森がゆっくりコーナーから離れるように、岩田に近づく、先ずは身体を慣らす、そして、一気に勝負をかけるつもりだ、岩田は距離を取ったジャブにカウンターで活路を見出す、そのつもりだった。



 岩田は、石森がコーナーから離れたと同時に、左ジャブと同時に間を詰める。

 石森の避け感は、間を詰めたジャブを難なく避けるが、重心が後ろに行ったジャブではない。

 

 岩田は直ぐ様、右のストレート、アウトボクシングを予想していた岩田のアグレッシブな姿勢。


 しかし、それも問題なく回避。


 (やぶれかぶれか)


 石森は、岩田の突進に動揺しない、視線の先には、左フックの予備動作が見える。


 姿勢的に、右脇を締めてボディに備えるり


 しかし、岩田の左フックは、ボディではなく、右の太ももを狙い、当てる。


 もう少し、体重を乗せれればだが変わったかもしれないが、ダメージは全くない、石森は冷静に左のジャブを返し、岩田の顔面を捉え、岩田は少し後ろに怯む。


 軽く当てられただけだ、岩田は首を振り、問題ないことを示す。


 石森は右のストレートは、バックステップを取った岩田は距離を取った。


 「アキラ、今は待て」


 石森の追撃を、セコンドの櫂が止める。

 虚を突かれたが、普通にやれば負けはない、櫂はそう判断し、焦らないように石森を声をかける。



 

 


 

 

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