第143話 意外な出会い

 第3試合の熱狂が冷めやらぬ内に、第4試合が始まることがアナウンスされる。


 リングサイドの関係者席には、石森陽の彼女、安里涼香の姿もあった。


 普段は試合を観に来ることはなかったが、大きな事故からの復帰戦、心配はしていなかったが、やはり心に引っ掛かって仕方なかった。


 「あまり顔色が優れないようですが、大丈夫でしょうか」


 整えた髭、スーツ姿からも筋肉を感じさせる肉体、涼香の隣の関係者席に座っていたは、覇王空手の両柱の一人、武田であった。


 本来Dブロックの関係者である彼であるが、上総介選手の申し出で特別にCブロックの関係席に通された。

 

 基本的には、却下されるのだが、武田は仁義の熱い、真っ直ぐ優しい男、比嘉は、万が一のカードで敢えて申し出を受け、試合中の石森の関係者の無意識のボディガードにすることにし、席を隣にしたのだ。


 「ええ、大丈夫ですよ、ただちょっと」


 涼香の含んだ返しに武田は余計心配になってしまい会話を続ける。


 「流血とかありましたから、気を揉んでしまいましたか、次の試合からは格別な技の応酬になると思いますよ」


 言い切った後に、武田は涼香が誰なのかを察し、言葉を続ける。


 「これは、気づくのが遅かったですな、ここは関係者席、石森選手の関係者、彼女さんとかですか」


 照れたように、涼香は頷く。


 「ならば、付け加えるならば、この試合はほぼ大番狂わせはないと思いますよ、残念ながら、岩田選手のファイトスタイルは、石森選手と噛み合わせが悪い、岩田選手の態度を見ると石森選手を下にまたている節があるから、対策がないなら、多分3分持たないと思います」


 涼香は、勿論武田の事は知らないがこの関係者席に座っているのがら、誰かの選手の関係者は想像できるし、見た目から強さを感じ取れるので、その言葉はシンプルに嬉しく思った。


 「申し遅れました、覇道流空手の武田と言います、失礼でなければ、この試合の観戦を共に楽しみましょう」


 そう言って、視線をリングに移す、今正に石森の紹介を終え、リングインを開始が心待ちにしている。


 

 

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