1回戦 第4試合

第142話 決戦前

 Bブロック控室─

 

「勝者は、レオとかいうプロレスラーだな」


 大会出場者、岩田貴之にセコンドの木梨が話しかけるが、岩田はウォーミングアップに集中してとり、その言葉は聞こえていない。


 ただ目の前の一戦、岩田はその事しか考えていなかった。


 別室では予想外の結果に、石森と柊木は、レオが勝ち名乗りを受けているモニターを見つめる。


 「作戦は変えないとな、レオには極力万全の状態で戦わないと足をすくわれる」


 柊木は石森に短期決戦の旨を伝え、石森もそれに答えるが、久しぶりの試合が、重量級、相手は同じボクサーとはいえ、その試合を勝ち抜けば、裏の格闘家との戦い、目の前の戦いに集中出来てなかった。


 

 「心配するな、お前なら問題ない」


 友人の柊木の言葉で少し気持ちを作ることであったが、それはバベルトーナメントとしてであり、対戦相手の岩田に対してではなかった。


 柊木は、オリンピックでの試合で岩田のファイトスタイルも熟知している。


 相手に手を出させない、アウトボクシング。

 避け感も、一流だが、そのファイトスタイルは、過去石森が対峙したチャンピオンの方が数段上、階級が違うとはいえ、スピードが違うのだ、アウトボクシングをしようとしても、距離を詰めた石森に対応出来る訳はない。


 「2回戦は長期戦になるのは予想できるが、こちらには『必倒』の技がある、それを出せずにレオ戦に備える、一度見せれば対応されるからな」



 柊木櫂は、石森の背中に気合の張り手を入れる。


 「俺達の伝説のはじまりだな」


 二人は、控室を後にする。

 


 

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